第63回日本感染症学会東日本地方会総会学術集会

10月29日〜31日に東京ドームホテルで開催された「第63回日本感染症学会東日本地方会総会学術集会、第61回日本化学療法学会東日本支部総会合同学会」に、青島主任部長、中島、渡邊、鈴木が参加してきました。

下記のように、青島主任部長は、呼吸器感染症(その他)の一般座長を担当し、当科から3演題を発表しました。


第63回日本感染症学会東日本地方会総会学術集会


中島の発表では、「新しい気管支鏡技術EBUS-GSにより血液疾患患者においても安全な肺生検が可能となった。生検量の増加や早期の検査により肺真菌症の診断率の向上に努めたい。」と述べました。
フロアからは、「生検の大きさは、気管支鏡による肺生検でも十分量が取れるのでしょうか?」と質問がありました。
中島は、「1回で最も大きな検体が取れるのはCTガイド下肺生検で、気管支鏡の5回分くらいの検体が取れます。CTガイド下肺生検は通常2-3回組織採取しますので、気管支鏡の場合は、検体数を10個以上取るのを目標にしたいと考えています。」と答えました。


渡邊は、「重症肺炎患者の抗菌薬投与後に持続する下痢を認める場合は、ベースの免疫能が正常であっても、偽膜性腸炎以外に、CMV腸炎も鑑別に挙げる必要がある。」と結論しました。
フロアより「重症患者でサイトメガロウイルスが活性化した場合に、臓器障害を認めやすい臓器は分かっているのでしょうか?」と質問がありました。
渡邊は「重症患者で臓器症状が出た報告自体がほとんど存在せず、どの臓器に症状が出やすいかは未だ不明です。」と返答しました。


鈴木は「間質性肺炎を基礎にもつ患者の感染性肺炎においては、基礎疾患を持たない患者と同様に、約30%にウイルスが検出された。検出ウイルスもライノウイルスやインフルエンザウイルスの検出頻度が高く、健常者と同様であった。」と報告しました。
フロアからは「なぜウイルス性間質性肺炎の検索範囲にCMVが入っていないのか」といった質問が出ましたが、「元来この検討はコミュニティベースの肺炎のインシデンス及び検出微生物の分布を知ることが目的であり、本検討はそのサブ解析であってセッティングがはじめから異なる。なお、ウイルスによる間質性肺炎の検討ではなく、既存に間質性肺炎を有する肺に起きた肺炎でのウイルスの検出状況の検討であり、誤解があるようです。」とお答えしました。


特に印象に残ったシンポジウムは、「感染症診断のピットフォール」でした。

「遺伝子検査の活用と限界」について講演された大楠清文先生(東京医科大学微生物学講座)に、当科から2つ質問をしました。


青島主任部長は、「当院は肺炎患者においてPCRを用いたウイルス検出の報告をしているが、検出ウイルスが肺炎を起こしているのか、それとも定着しているだけなのかの判断が困難である。今後検出ウイルスが定着なのか肺炎を起こしているのかを区別する試みとしては、たとえばカットオフ値の設定は難しいだろうが、定量的PCRを用いるなどの方向性はあるのか?」と質問しました。


大楠先生は「ウイルスが肺炎を起こしているかどうかの判断は今のところ困難で、臨床所見を加味して総合的に判断するしかないと思われる。ただ、遺伝子検査によるウイルス検出の報告も増えて来ており、臨床像とウイルスの定量などを合わせていくことで、今後徐々に明らかにされていく可能性がある。」と答えられました。


昨年まで亀田総合病院、呼吸器内科に医長として在籍され、現在、地元愛媛県に戻られ、松山赤十字病院呼吸器センター副部長をされている牧野英記先生とも、久しぶりに再会し、昔話に花が咲きました。

当院の研究成果も報告でき、感染症に関する最新知識も仕入れることができ、充実した学会でした。

第63回日本感染症学会東日本地方会総会学術集会

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患