GeriPal Conference with Dr. Moody  8月第4週

出席者: 関根 蔵本 江川 瀬良 千葉 岡田 中島 Dr.Moody

ローテーターのお二人は本日最終のGeriPal Conference with Dr. Moody。研修医2年目の中島先生に、産婦人科ローテーション中に経験した症例を共有していただきディスカッションをしました。

Case Presentation

  • 58歳女性 子宮肉腫
  • 発見後試験開腹後1回のみ化学療法を施行し、BSCへ移行
  • 発見から1ヶ月半でBSCへ移行しており、本人が状況についてこられない状況
  • 研修医として日々訪問したが、症状についてしか話してくれない
  • 夫も日に日に疲れていき、本人とは別に時間を設けて面談していた

Q:彼女の、身体症状にとどまらない「苦痛」を聞き出すため、どのような配慮が必要だったか?

中島) 産婦人科ローテーション中は「医師は自らの感情を出すべきではない」と考えていたが、患者の助けにはなりたかった。
Dr. Moody) 医者としてではなく、あなた自身としてどのように「感じて」いたか?
中島) 海外に出ている子供に会わせてあげたかった。
Dr. Moody) 医者の立場を離れられたとして、個人としてどういう対応をしたかったか?
中島) 今は辛い時期だと思うが、少しでも楽になれるように助けになりたい、という気持ちだった。
Dr. Moody) 先ほど「患者さんがこんなことになって悲しい」と言っていたが、その感情を出してもよいと思う。だれか、他に意見のある方はいらっしゃいますか?
岡田) 家庭医として、死の現場に立ち会うことがあまりないので、正確に状況を思い浮かべることはできないが、「友人として」一緒にいること、はできると思う。その時に「何かを言う」ことは難しいかもしれない。
Dr. Moody) 多くの患者さんが経験する多くのことを自分は経験していないけれど、いろいろな機会にその経験について想像することはできるわね。
岡田) 全く同じ状況を経験していないと、コメントが軽くなってしまう気もする...。
Dr. Moody) 「よくなるよ」とか「がんばって」といった無責任な言葉は「軽い」が、患者のつらさを想像する際の言葉は軽くはならないと思う。
瀬良) いま、振り返ってみて、本当に彼女は「心を開いていなかった」と思うか?
中島) 毎日たずねてはいたが、日に日に悪くなっていく状況を短い時間で伝えるだけのコミュニケーションであった。最期の二週間には感謝の言葉もかけてくれた。もちろん彼女の心を全て開いたとは思わないが、少しは開けたかもしれない。心配事や、痛みについて教えてくれた。でもその全てを受け止められなかったように思う。
関根) 疼痛やその他の症状の緩和については比較的学習しやすいが、コミュニケーションについては学ぶのが難しく、日々試行錯誤の繰り返しである。
Dr. Moody) 患者は十人十色なので、経験のある医師でも、「この方法さえ使えばよい」という方法はない。一生をかけて学び続ける必要がある。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和