vol.55 高度医療を必要とする患者のケアを劇的に改善する5つのステップ

高度医療を必要とする患者のケアを劇的に改善する5つのステップ(Dr. Diane Meier)〜今後爆発的に増える高齢慢性疾患患者に病院が対応するための道しるべ〜
以下、文章要旨です:

米国では75歳までに78%の人が2つ以上の慢性疾患を有している。ここでいう慢性疾患とは関節炎、認知症、高齢による身体機能低下(フレイル)や、がんや心疾患のような重篤な疾患まで幅広い。

  1. 高度医療を必要とする患者とはどういう患者なのかを同定する

  2. 高度医療を必要する患者を評価し、リスク順に重みづけをする。
    救急を受診する最も多い理由は、除痛困難な痛み、呼吸困難、不穏などの症状である。頻度の高い困難症状の原因は電子カルテ情報から同定可能である。頻回の救急受診の原因が痛みのコントロール不良、呼吸困難等であれば、緩和ケアスキルのある医療者が関わることでこの問題が解決しうる。

  3. ニーズと提供サービスの摺り合わせを行う
    進行疾患患者が頻回に救急を受診する理由は、病気の進行であり、それによる苦痛症状や身体機能低下である。この問題に対処する最適の方法は病院緩和ケアチームの介入である。全米では50床以上の病院の65%に緩和ケアチームが存在するためこうした支援が可能である。しかし、急激な緩和ケアのニードの増加に対応すべく、スタッフ増員とサービス拡大が急務である。

  4. 医療者全体への緩和ケア教育
    殆どの医療者は緩和ケアの教育を十分に受けていない。ここでいう緩和ケアとは、悪い知らせに関するコミュニケーション、治療ゴールの話合い、家族面談のセッティング、安全かつ有効な疼痛等の症状マネジメントが含まれる。現在ではオンラインで質の高い研修が可能であり、これらの活用も有用である。

  5. 患者アウトカムを追跡する
    先進的な取り組みによって、30日以内の再入院や病院内死亡率といった医療の質の改善につながるかどうか、救急受診の原因分析によってその内容が改善しているかどうか検証する。

この上記の5つのステップを日本でも実現できたら、どれだけの多くの患者さんのQOLが改善し、苦痛が減らせることでしょうか。Dr. Meierは、急性期病院の緩和ケアチームに、疾患によらず、すべての入院患者を対象に、横断的に苦痛やつらさが強い場合サポートを担当することを期待しています。 そして、私どもの緩和ケアチームもDr. Meierと同じ目標『すべての患者さんに緩和ケア:Palliative Care for All』を掲げています。現在、期待されている役割を果たせる理想の緩和ケアチームに少しでも近づけるように、これからも私どもは日々研鑽を積んで参ります。

(関根)

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このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和