vol.54 Dr. Basch(米国ノースカロライナ大学)の研究グループより@2017ASCO(米国臨床腫瘍学会)

『外来通院中の進行がん患者がオンラインによる症状報告システムを用いた場合に、用いなかった場合と比較して生存期間が5ヶ月延長した』
〜Dr. Basch(米国ノースカロライナ大学)の研究グループより@2017ASCO(米国臨床腫瘍学会)〜

実に素晴らしい結果です。この研究では、生存期間のみならず、QOL向上、救急受診や入院回数の減少、抗がん剤治療期間延長といった望ましいアウトカムが示されました。

私達緩和ケアチームは、がんサポート外来で進行がん患者さんに症状緩和の目的などで、以前より早い時期から関わる機会が近年増えて来ました。また、日本では、全国のがん拠点病院で、症状スクリーニングの徹底が現在強調されていますが、実効性がまだ伴っておらず、スクリーニングという行為がどうやったら患者アウトカム向上に繋がりうるのか、その方法論もまだ確立されていません。このDr. Baschらの研究結果は、この疑問への一つの回答を示しています。つまり、『進行がん患者から医療者へ、直接、症状を自主報告できるオンラインシステムを導入することにより、症状発現から医療介入までのプロセスがシステム化されれば、結果的にすべての患者アウトカムは向上しうる、ということです。

当院では高齢者が多いですから、どれだけの患者さんがこのようなオンライン報告システムを使いこなせるだろうかと考えてしまいます。IT技術の発展によりこうした障害も十分克服できるのかもしれません。日本でも(当院でも?)同様のシステムの導入は可能でしょうか?この研究結果は検討の価値が十分あることを示していると思います。

(関根)

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このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和