【呼吸器外科】研修医の先生方へ

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亀田総合病院 呼吸器外科 顧問の野守裕明医師より研修医の先生方へ


医療とは患者を全人的にとらえ「尊重と敬愛の念」をもってサービスを行うことを基本とします。「尊重と敬愛」とは「患者を治すために積極的かつ全力を尽くす」と言うことです。しかしどの科の診断や治療においても、積極性と危険性は裏腹の関係にあります。すなわち高度の診断や治療を積極的に行おうとすると、通常より誤診あるいは治療による合併症の危険性が増すことがあります。しかし時にはそれを乗り越えないと、医療の基本である「患者に対する尊重と敬愛の念」から遠ざかっていきます。先生方のほとんどが家族あるいは自分が病気になったときに「もっと優れた診断・治療はないものか?」と思ったことがあると思います。「もっと優れた診断・治療」をするためには、時には危険性のある医療行為を行う必要に迫られることがあります。その際に知識や技術力が不足していると消極的になり、患者は治らないことがあります。そのためにどの科においても若い時代にその知識や技術力を身につけることは重要です。

外科学の場合は患者さんに人為的侵襲を加えることによって診療を行う、すなわち人体にメスを入れることにより成り立つ医療です。そのため外科医師には、患者にメスを入れることに対する責任が生じます。その責任を果たすことを我々外科医は常に心に留めておかなくてはいけません。もちろん最初からできることではなく、ある期間の修練が要り、名実ともに専門医になるには呼吸器外科の分野では少なくとも10年間はかかります。近年、若い医師あるいは学生から、そのように責任が重く一人前になるのに時間のかかる外科は敬遠され、どの病院でも外科医不足に悩まされています。しかし逆に言うと外科医ひとりひとりの存在価値が高まってきています。外科の中でも呼吸器外科は最近になって診療科として独立した経緯から、呼吸器外科医の数は特に少なく、どの病院でも最も欲しい外科医のひとつです。これから社会の高齢化がさらに進み、肺癌を始め呼吸器の疾患は確実に増え、呼吸器外科医の需要はあなた方がリーダーシップをとる30年後までは必ず増え続けます。自分の進む道を選ぶのに目先の状況よりは、自分が最も活躍できる10-30年後の社会を見据えて決める方が、将来生きがいをより高く持てるのではないでしょうか。

卒後6年間というものは若いエネルギーが爆発する時期です。その時期は頑張れば頑張るほど「自分がやりたい」ものが見えてきます。その時期には自分のやりたいことをやることが一番ですが、その環境も重要です。「優れた教育環境」はなかなかあるものではありまが、頑張っている人にはどのような教育環境が優れているかが見えていますし、その教育環境を最大限に生かせるはずです。

自分を信じて頑張ってください。

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亀田総合病院 呼吸器外科 顧問
野守裕明

このサイトの監修者

亀田総合病院
腫瘍内科部長 大山 優

【専門分野】
がんの包括的医療、病状に応じた最善の治療の選択と実践