第38回日本血栓止血学会学術集会で原田陽平先生が「深部静脈血栓症」について報告されました

当科に3月まで在籍し、今は佐賀大学医学部に移動した原田陽平先生が、日本血栓止血学会学術集会2016年で下記を報告しました。深部静脈血栓症はがん患者に多く、その診断、治療は重要です。当科は出血凝固も専門分野の1つとしており欧米の最新の知見に基づいた診療を行っています。多数の症例をもとにした日本における希少なデータの発表を行い反響をいただきました。今後もこの分野での経験を集積し日本におけるEBMを確立して行きたく思います。


第38回日本血栓止血学会学術集会

2016年6月18日 D会場 奈良春日野国際フォーラム
一般演題(口演)21 深部静脈血栓症

O-080 悪性腫瘍に合併したVTEに対してエドキサバンを使用した16例の報告

原田陽平、齋藤亜由美、三浦大典、大山 優
亀田総合病院腫瘍内科

【背景】

VTE(venous thromboembolism)に対する標準治療は、長らくヘパリン及びワーファリンであったが、近年NOAC(novel oral anticoagulants)がほぼ同等の効果を有する事が示されている。本邦でも2014年にエドキサバンでVTEに対する適応が追加されたが、悪性腫瘍に合併した例での有効性や有害事象に関するデータは未だ不十分である。

【方法】

2014年9月から2015年8月で、当科での悪性腫瘍のVTE合併例に対してエドキサバンを使用した症例を検索したところ16名が該当した。それらの症例で患者のプロファイル、臨床的有効性、有害事象について検討した。

【結果】

年齢中央値は62歳、男女比5:3、悪性腫瘍の進行度はNED(no evidence of disease) 2例(12.5%)、局所病変のみ 3例(18.7%)、転移性病変あり 11例(68.8%) であり、組織型は腺癌10例(62.5%)、扁平上皮癌 3例(18.7%)、小細胞癌 1例(6.3%)、神経膠腫 1例(6.3%)、特定不能 1例(6.3%)であった。中心静脈カテーテル関連血栓症は5例(31.3%)、PE合併例は3例(18.8%)、治療においては、ヘパリンをエドキサバンに先行した症例が10例(62.5%)、何らかの理由でエドキサバンから治療開始した症例が6例(37.5%)であった。治療効果は14例(87%)で臨床的あるいは画像的に改善を認め、残りの2例では治療効果不十分あった。有害事象は1例(6.3%)で小出血のイベントを認めたのみであった。

【結論】

今回、少数例ではあるが日本人の悪性腫瘍患者のVTEに対して、エドキサバンは有効かつ安全に使用できることが示唆された。

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原田陽平先生
現在、佐賀大学医学部にてご活躍中

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このサイトの監修者

亀田総合病院
腫瘍内科部長 大山 優

【専門分野】
がんの包括的医療、病状に応じた最善の治療の選択と実践