当科の特徴

亀田メディカルセンター※1は、急性期医療を中心とした亀田総合病院(病床数917床)、亜急性期医療としての亀田リハビリテーション病院(病床数56床)、外来診療として亀田クリニック(病床数19床)、亀田MTG・IVFクリニック幕張、亀田京橋クリニック、亀田ファミリークリニック館山から構成されています。

当センターは千葉県南房総の鴨川市、人口約3万5千人と比較的小さな市に位置しますが、房総半島の南部地域の中核病院としての役割を担い、診療科目34科、クリニックは1日の平均外来患者数3,000名に及びます。さらに近年では国内の様々な地域、また海外からも多くの方々が来院されます。当院の特徴は医師卒後教育に力を入れていることです。まだ医師臨床研修制度など皆無であった20数年前に、米国人指導医師も含めたレジデント制度を導入しました。現在もその流れは脈々と続き、医師臨床研修はもちろん、専門医教育まで幅広い研修教育体制が整っています。

さて、当センター産婦人科は大きく分けて周産期部門・悪性/良性婦人科疾患部門の2つの部門で構成されおり、さらにNICU(新生児科)・生殖医療科・ウロギネ科、緩和ケア科などをはじめ多くの診療科、パラメディックスと連携し、総合的に女性診療にあたっています。

※1亀田総合病院を中心とした医療サービスの総称

<産科部門の特徴>

周産期医療部門は、千葉県初の総合周産期母子医療センターとして認可されたセンターを中心に、リスクの高い妊産婦や新生児に高度な医療を他診療科と連携して提供しています。病床はMFICU(6床)、産科一般病床(14床)、産褥病床(10床)、LDR(6床)、新生児科(NICU9床・GCU18床)を構え、ローリスクから悪性腫瘍・内分泌・心・腎疾患など重症内科合併、胎児疾患などのハイリスク症例の管理まで妊娠週数や児体重の制限なく幅広く診療しています。診療実績は、分娩数682例(2016年実績)、そのうち帝王切開術205例(分娩数の30%)でした。外来診療は妊婦健診外来に加え助産師外来を併設し、ローリスク妊婦に対しては産科医と助産師の協働により安全かつ満足度の高いお産を提供しています。またハイリスクに対してはハイリスク外来を中心に各科と連携して高度な周産期医療を提供しています。特定妊婦については、行政と協力して、地域と医療機関がシームレスな関係で妊婦とその家族を支援しています。

分娩室はLDRを導入し、陣痛開始から分娩終結までの管理を同室で行っています。NICUを同フロアに、手術室を一階下に配置しており、急変時には新生児科、麻酔科と連携しています。多量出血時などには、救命救急科、放射線科、集中治療科との連携によりカテーテルインターベンションとその後の管理を行っています。

母体搬送の受け入れは44例(2016年実績)でした。医療圏が広範囲のため、搬送に時間を要する事も多く、救急部との連携により状況に応じて当院の救急車を周産期ドクターカーとして運用し、産科医/新生児科医の同乗により、救急車内分娩などの不測の事態に対応すべく、患者との早期接触および治療開始を行っています。

またNCPR、BLS/ACLS、ALSOなどに準じたシミュレーショントレーニングを積極的に行い、チームSTEPPSを導入し、よいチームワークで医師・コメディカル間で実践訓練をしています。

<婦人科部門の特徴>

婦人科の手術症例は良性・悪性をあわせて1,332例(2015年実績)でした。良性疾患では、開腹・腟式・腹腔鏡・子宮鏡(子宮内膜焼灼術含む)手術を症例に応じて実施しています。内視鏡手術では、腹腔鏡技術認定医のもと、子宮内膜症や良性卵巣腫瘍、子宮筋腫に対して核出、子宮全摘術等、137例の手術を行いました(2015年実績)。妊孕性温存を希望する症例については生殖医療科と協議し、腹腔鏡手術および高度生殖医療技術を併用することで妊娠成立を目指し、またその後の周産期まで連続した医療体制で管理しています。悪性腫瘍については、日産婦学会婦人科腫瘍登録施設、婦人科腫瘍学会専門医修練施設の認定を受け、また地域がん診療連携拠点病院として、治療に積極的に取り組んでいます。手術症例は105例(2015年実績、円錐切除術を除く)で、広汎子宮全摘術が11 例、傍大動脈リンパ節郭清術を含む手術が21例でした。外来初診から診断・治療計画の立案と実施、治療後のフォローアップを行い、併存疾患の多い症例では他診療科/施設と連携し、終末期症例では緩和ケア科、在宅医療部との協働で全人的医療を行っています。ウロギネ科では骨盤臓器脱に対するメッシュ補強治療に加え、腹腔鏡下仙骨腟固定術を含め208例実施されています。

<生殖医療科との連携>

生殖医療科では、体外受精を始めとした高度な生殖医療を提供しています。女性不妊外来に加え、男性不妊専門外来を併設し、精索静脈瘤手術および顕微鏡下精巣内精子回収法を、また若年の妊孕性温存を希望するがん患者には症例に応じて精子・卵子・受精卵凍結、また卵巣組織凍結を実施しています。また、遺伝カウンセラーや臨床心理士による患者のサポートも行います。

<研修教育の特徴>

当科の初期臨床研修・専攻医研修の目標は、産婦人科医として十分な臨床能力を養成することは勿論のこと、医師として疾患ではなく患者を診療し、知識や技量に加え患者に寄り添った医療が提供できることを第一にしています。その目的達成のためには、診療の基本である問診・診察・診療録記載が重要であり、それをもとにした診療プロセスについてのフィードバック、ディスカッションに重きをおいています。外来診療では専攻医研修1年目の後半から産科外来、2年目より婦人科外来を担当し、問診、診察、診療録記載により、投薬治療や手術術式を含めた診療方針決定が適切に行えるよう毎朝の定期カンファレンスで症例についてディスカッションが行われます。そのほかに産科・婦人科・NICUカンファレンスなど、週単位でコメディカルを含めて患者治療の方針を検討しています。

各種勉強会については産科婦人科共に月2回、病理科合同で2ヶ月毎に設け、文献や症例を上級医と共に忌憚なく議論しています。

産婦人科専門医となった後は、周産期専門医、婦人科腫瘍専門医、生殖医療専門医、女性医学専門医、内視鏡技術認定医、超音波専門医などさまざまなサブスペシャルティを目指すことが可能です。研修医を指導することが負担であるという考え方もあるかもしれませんが、当院の医師たちは「教えることは最高の学び」と考え、同僚として研修医/専攻医とともに学び、次世代の産婦人科医療を築いていきたいと考えています。