コラム

第3回 リンパ浮腫の進行とリンパ管の変性

前回のコラムでお話しましたが、リンパ浮腫は、リンパ流の停滞により間質にリンパ液が貯留する疾患であり、浮腫による四肢の太さの変化のみならず炎症・感染の発生といった様々な病態による障害をきたす難治性の病気です。多くは、がん治療後の二次性リンパ浮腫であり、リンパ流の停滞によるリンパ管の変化を理解することが大切です。

リンパ節郭清により、リンパ流はその付近で閉塞し停滞します。それによりまず、リンパ管の内圧が上昇することでリンパ管は拡張します。その状態が続くと、次にリンパ管自体に負担がかかり変性をきたすことになります。

変性について少し詳しくお話しします。キーワードは、(1)平滑筋と(2)内皮細胞の二つです。

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まず、太いリンパ管の外側は平滑筋という筋肉で構成されています。通常は、この筋肉によってリンパ管の蠕動運動が可能となり重力に逆らった能動的なリンパ液の輸送が可能になります。しかし、リンパ管の内圧上昇が続くと、平滑筋が形質転換して増殖し肥厚することで内腔がどんどん狭くなっていくのです。
次に、リンパ管の内側は、リンパ管の内皮細胞同士が接着することで構成されていますが、リンパ管の内圧上昇などにより、この接着がゆるんでいき、個々のリンパ管内皮細胞が離れてしまいます。この過程いおいて、リンパ管内からリンパ液が漏れ出ていまうため、リンパ管のリンパ液の回収能力が低下してしまい、浮腫が悪化するのです。

このように、リンパ管の変性に伴いリンパ浮腫は進行していきます。つまり、リンパ流の閉塞・停滞という根本的原因を改善しない限りは、リンパ管の変性は着実に進行していくのです。さらに、四肢の各部位におけるリンパ液の貯留は脂肪沈着や脂肪組織の肥大化を引き起こすこともわかっています。たとえ保存療法や外科治療で患肢のリンパ流を改善したとしても、肥大化した脂肪組織は残存してしまいます。そのため、リンパ浮腫の早期診断・早期治療介入が大切なのです。