コラム

第13回 リンパ浮腫と蜂窩織炎(1)

リンパ浮腫の患者様の特徴的な合併症として、患肢の炎症(細菌感染)があげられます。その中でも、リンパ浮腫患者の半数以上が経験する可能性がある蜂窩織炎について説明していきます。

リンパ浮腫とは、リンパ管の異常に伴い、皮下組織にタンパク質などを含んだ組織間液が異常に増えた状態です。リンパ浮腫のある患肢は、浮腫んで皮膚が張り、乾燥するために外部の刺激から体を守ることができず細菌感染を引き起こしやすくなります。また、浮腫んでいる部位の組織間液はタンパク質や脂肪、壊れた細胞・細菌などの老廃物を多く含んでいるため細菌が増殖しやすくなります。

そのため、リンパ浮腫の患者様は、小さな傷や過労や体力が低下しているときに蜂窩織炎を発症することがあります。 

蜂窩織炎になると、患部に赤みや腫れが急速に広がります。蜂窩織炎などの感染をきっかけにリンパ浮腫を発症したり、増悪したりすることがあるといわれています。(リンパ浮腫診療ガイドラインより)

蜂窩織炎の場合、早期に治療を開始し、速やかに炎症を抑えることがとても重要です。

(1)このような症状がでた場合は、蜂窩織炎を疑い近隣の医療機関を受診しましょう。

  • 患部の発赤・患部の熱感・患部の疼痛
  • 浮腫の増悪
  • 38℃以上の発熱
  • 倦怠感

(2)医療機関の受診

*受診した場合は、リンパ浮腫を発症していることや、がん術後でリンパ節郭清術を施行していることなどを医療者に伝えてください。

  • 血液検査(白血球・CRPの上昇など)

(3)蜂窩織炎の診断がついたら・・・

  • 抗菌薬を内服の処方または点滴してもらいましょう
  • 患部を冷やして安静に保ちましょう

*まずは感染に対する治療が優先となります。炎症がおさまるまではスキンケアのみ継続し、リンパドレナージや圧迫療法はお休みしましょう。


【患部の冷却方法】

  1. 氷嚢または、氷と水をビニール袋に入れて布で包んだものを準備します。
  2. 患部に氷嚢を密着させます。
  3. コロコロ転がしながら患部のその部位の熱がひくまで冷やし、位置をずらすことを繰り返します。

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