〜最も向いていないレジデントによるポートフォリオ〜

エントリー項目

〜終末期のケア〜

Key word

予後予測ツール、マズローのハンマー、臨床倫理の四分割法、終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン

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〇入院時フルコードだった患者さん、入院でADL・経口摂取量が低下、家族の理解力やケアのマンパワーも乏しい状況があり、担当医としては、療養型病院への転院だろう、と考えていた。家族が「本人が家に帰りたい、と言っているのですが、自宅に退院することはできますか?」と言われても、いや、無理だろうと考えていたが、指導医の「調整すればできるよ、私が訪問するよ」の言葉で方向転換、4分割法でもあらためて症例を振り返った。その後、病状説明や、ケアの指導を重ね、自宅退院。退院後は自宅で家族の身守る中看取りまで過ごした。自宅療養の場面にも指導医と訪問することができた症例。

考察では、意思決定のプロセス、現在の日本では自宅療養を希望する人が半数いること、ただしそれを阻害する要因に、家族の介護負担・本人の遠慮する気持ちに加えて「医師側の選択肢の乏しさ」が挙げられていることを紹介してくれました。発表後のディスカッションでは、終末期を考える上で重要な「予後の見積もり」、とくに非がん疾患でどう考えるか、「終末期のサプライズクエスチョン」の紹介や、在宅の現場を様々みることで療養の場所・方法の選択肢は広がるのではないか、「マズローのハンマー(:金槌を持っている人には全てが釘に見える)」という考え方があり、ジェネラリストとしては自分がどの道具(外来、在宅、入院)を使い慣れているのか、実際に主体で何を使っているのか、そしてどんな思考の癖があるのかをメタ認知した上で、できるだけ偏りの少ない視点を持てるようにしていくことが大切だろう、という点にも話が広がりました。

常石先生にとって、初めてのポートフォリオ発表でしたが、素直な自分の感情面にもスポットを当てながら、議論の深まる症例と考察を共有してくれ、有意義な時間となりました。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学