もやもやの果てに

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高齢者診療


症例80代男性 認知症・側頭葉てんかん・排便困難など複数疾患、多剤内服あり。
引き継ぎの1年前から認知機能低下あり。介護に追われた娘がうつ病を発症していた。
同居の娘が施設利用を拒んでいたが説得してようやく利用するようになり、将来的には施設入所も検討する方針となっていた。
排便へのこだわりが強く浣腸頻回に使用、繰り返し説明するも忘れてしまい処置を希望していた。浣腸後に痔核出血し臨時受診。抗凝固薬などの処方を中止。その後も脱水・肺炎・腎盂腎炎などで入院、台風被災などで、夜間不穏を認めるようになった、臨時受診で症状安したが、定期外来で処方調整すると悪化しまた臨時受診する状態であった。
入院や状態悪化を防げず、自責の念を感じていた。内省的に振り返ると患者の状態を安定できなかったことや、施設入所のゴールに導けなかったことを葛藤していたが、患者の状態は実は大きく悪化せず安定していることに気がついた。家族内での意見の対立や関係性も見えてきて、実は医師自身が問題を感じていたが、本人・家族としては大きな問題に感じていないことにも気がついた。
ディスカッションの中では、家族の関係性や認知症の評価をさらに深めることや、医師として患者や家族からの訴えがある中で、あえて何もしないという選択肢の難しさなどが議論された。システム思考には「自分が関わっている事例の問題の原因は自分ではないかと考える」というパールがある。多疾患依存に何を介入したら効果があるのか十分なエビデンスはない。患者・家族と診療のゴールを共有し、治療の負担Multimorbidity Treatment Burdenを減らす(救急受診、入院を減らす)ことを一つの目標をしてはどうかとのアドバイスがあった。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学