診療現場におけるリサーチフェローと臨床医の連携(第18回RJC)

ジャーナルクラブ 第18回
2019/01/30
高橋亮太

1 タイトル

「診療現場におけるリサーチフェローと臨床医の連携」
Partnering Research Fellows and Clinicians in Practice Settings.
Maria Ukhanova, John Heintzman, Ann Tseng, Daisuke Yamashita, Sonja Likumahuwa-Ackman, and Jennifer DeVoe.
Ann Fam Med January/February 2019 17:86; doi:10.1370/afm.2333
カテゴリー research journal club
キーワード なし

1 改革
*家庭医療におけるリサーチの重要性
患者ケアの第一線において、家庭医はどのように自らの診療を改善させるべきか、もしくは、現在進行形のイニシアチブのインパクトを残していけるか、を日々悩んでいる。
しかし、臨床現場では経験や時間がないことがしばしばある。研究者との連携は効果的な方法であるが、このような連携は散発的であり、それらはtop-down方式の研究プロジェクトであることが多い。

*オレゴン健康科学大学(OHSU)での試み
Postdoctoral Research Fellowship in Family Medicine
Researcher in residence model
on-site research expertise
1)臨床医が現場で感じるクリニカルクエスチョンを研究もしくはQI活動に変換する
2)研究者にとっても、臨床の専門家とともに活動する経験を提供する

2 誰が、そしてどこで
*OHSU
・オレゴン州で複数のプライマリケア診療所を運営
・ポートランド2つの診療所 2人のポスドクフェロー
・フェローは公衆衛生大学院のアカデミックプライマリケアリサーチトレーニングを卒業したばかり。

3 どのように
・週に1回 フェローは診療所で勤務
 診療所運営に関わる 会議に参加 スタッフのフォロー
 臨床医の研究関心分野 活動ログをつける
・オフィスアワー
 臨床医がアイデアを議論 研究段階によらず
・1年目
 非常勤医師・指導医がフェローの知識を吸収
 フェローは臨床的な知識を獲得する
・フェローの活動
 リサーチクエスチョンの文章化
 データ収集、分析
 現場ニーズにあった研究疑問の明確化
 研究成果を医療的な解釈の促進
 時間と関心にあった研究プロセスの共有
・研究の例
 文献レビュー プロジェクト枠組み作成
 プライマリケア診療所におけるC型肝炎治療モデル
 抄録作成および学会登録のサポート
・別の診療所
 所長とフェローが共同して従業員のバーンアウトを減らす方法を評価するプロジェクト

4 学び
・臨床医は研究者モデルに対して常にオープン
・フェローの存在が臨床医がアイデアを広げるのに良い影響を与えている
・反響版のように、リサーチをする壁を下げている
・一方で、課題もあがる
 アイデアを検討する際に臨床的な責任の所在が不明
 助成金がない
 より上級の研究者の指導が必要
 診療所プロジェクトにおけるフェローの役割が不明確
 などがある
・リトリートにおいての指導医コメント
 フェローの存在に感謝
 しかし、どのように連携するか不明確な部分もある
・関係性と役割の構築には時間がかかる
・来年には
 フェローシップ指導医として、さらに積極的に屋根瓦式指導を頑張っていきたい
・現在、2つの診療所でオピオイド依存治療の評価研究を立ち上げたところである

*まとめ
・リサーチフェローは研究と臨床の架け橋
・アカデミック部門
 このようなモデルは、臨床現場における批判的吟味の文化を促進する
 臨床医に学術的好奇心や現場ニーズを満たすための方法やツールを提供する
 構造化された関係性やプライマリケアにおけるリサーチキャパシティーを構築する
・アカデミックな環境と離れた地域の現場では、バーチャルな形での研究協力は可能となるか、それは将来的に検討していくべき課題と考えている

5 日本のプライマリケアへの意味(発表者の意見)
*リサーチフェロー(ポスドク研究者)と臨床医がクリニックレベルで連携する
 > プライマリケア研究の新たな形 まさにイノベーションと思われる

以上

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学