揺れる家族

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終末期

キーワード

終末期、予後予測、意思決定、家族指向のケア

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〇本日のポートフォリオ勉強会は、専攻医1年目山田美登里先生。亀田ファミリークリニック館山から車で10分ほどにある病床数149床の急性期病院、安房地域医療センターで開催されました。安房地域医療センターと亀田ファミリークリニック館山は合同で家庭医療専攻研修プログラムを作っており、繋がりが深い施設です。そんな安房地域医療センターの総合診療科医師や初期研修医も多く参加してくださり、盛り上がりをみせました。

さて、今回の症例は胃癌終末期の高齢男性。手術や化学療法は希望されず、在宅診療導入となりました。腫瘍による通過障害ゆえ嘔気嘔吐と食思不振の症状が強く、レスパイト目的入院を担当することとなった山田先生。刻一刻と変化する病状を前に、予後予測に悩みながらも、本人の病状悪化の加速度を鋭敏に感じ取ります。早急に方針を決めなくてはいけない。しかし、家族は揺れ動いている。どうすれば......。――「正直、患者さんやご家族の一番の希望がわからなくなっています。でも、それがわかったら全力で支えたい。一番の希望はなんですか?」――当人たちと真摯に向き合い、自然と口にした言葉。この一言をきっかけに皆が同じ方向を向き、舵を切ることができた事例でした。

ディスカッションには在宅を担当した医師も出席しており、在宅―入院間の引き継ぎや協同した意思決定にかんする議論や、レスパイト入院のありかたについて、「予後予測」の考え方・使い方など多岐にわたる内容があがりました。岡田院長からは入院担当の強みとして短時間で繰り返しアセスメントができること、4つの継続性のひとつであるジェネラリズムの継続性の価値について、家族指向のケアという文脈で当事例を分析した際にどのようにうつるかといったコメントがありました。今回の事例をきっかけに、病診連携がより深まり、患者さんがよりhappyになれることを願ってやみません。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学