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BPS、コミュニケーション、行動変容、(PCCM)、プロフェッショナリズム

キーワード

強化インスリン療法、引き継ぎ

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○症例は糖尿病で強化インスリン療法中の高齢男性。歴代の家庭医たちが手をこまねいてきた方です。数十年来の糖尿病歴があり内服でコントロール困難なためインスリン注射を行っている経過がありました。

アドヒアランスにも難あり、自分でインスリンを調整する、血糖測定もほとんど行わずインスリンの調整がむずかしく、時々低血糖もある中でA1c8%台でした。自分は1型糖尿病だから、ということでインスリンは離脱できない。知人が糖尿病で失明したり透析したこともあり糖尿病で合併症が出てくるのは嫌といった意識はありました。
カルテレビューを改めて行うとそもそもインスリンを導入されたのはACCORD試験の前であり、糖尿病内科での記録でも1型糖尿病という記載はなかったため、強化インスリン療法を行う必要はないだろうと判断しました。本人と問題・ゴールをすり合わせ、低血糖リスクも避けるため、持続インスリンと内服(BOT)へ変更し、本人もインスリンの回数が減って喜び納得されて継続しました。

ディスカッションでは持続血糖測定の検討はされたかどうかや、他医師の患者でインスリン強化療法で対応に困難だった方の共有、いままで先輩の医師がやってきた治療を大きく変えたことに対する称賛、引き継ぎのタイミングは関係性がない分新しいことを提案しやすく診療を変えやすいという意見、BPSだとBの部分に介入してPSが落ち着いてきたという症例なのでプロフェッショナリズムやコミュニケーションのほうがよいのでは、という意見がでました。

岡田院長より
引き継ぎ時の診療の見直しの必要性を改めて気付かされる症例。前の〇〇先生が見ていたから大丈夫だよねと思ってしまう落とし穴があるので、予約外で受診する他医師の定期患者でも自分だったらその治療方針で良いかどうかということを考えること。
これは医療者・患者両方の行動変容であり、パラレルチャートで記述するとユニークなポートフォリオになるのではないか。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学