「当たり前」の罠 分野 コミュニケーション

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○症例は60代男性で脳出血による右不全麻痺の方で、妻は在日外国人でした。リハビリが必要であったが、経済的な問題から自宅退院され、当院外来へ紹介となりました。外来にて麻痺症状の増悪あり、救急外来へ紹介するも受診につながらず、その理由として、金銭的な理由を述べられました。無料定額診療ができる病院や、中核地域医療センターへも紹介したものの、受診前に再度意識障害を伴う脳梗塞で救急搬送となりました。意思決定におけるコミュニケーションに困難さを感じた症例でした。

コミュニケーションの難しさの背景にあった、「ずれ」について、Patient Centered Clinical Method(以下PCCM)、ヘルスリテラシーについての学びと振り返りがなされました。

今回の医師と患者の認識のずれをPCCMに則り、緊急性の認識のずれ、経済的負担の認識のずれ、制度利用の認識のずれをあげてくれました。また、ヘルスリテラシーの考えからも考察され、ヘルスリテラシーに低い人の特徴として、不正確な受療行動、説明文書をその場で自ら読まないこと、処方薬(名称、目的、内服タイミング)について説明できないことがあり、そのような行動からヘルスリテラシーの低さに気づき、対応していくかが大事であると述べていました。また、相手の理解の確認として、Ask Me 3(waht/how/why)法、Teach Back法(家族に説明するならどう説明するか?)、Show Me法(手技の実演)が述べられていました。さらには、制度については中核地域支援センターの役割、無料低額診療についての学びもありました。

ディスカッションでは、実臨床でどのようにヘルスリテラシーの低い患者を拾いあげるか、どのように相手の理解を確認するか、外国人の場合どのようなコミュニケーションをとると良いかなどが取り上げられました。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学