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統合的ケア

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入院〜外来〜在宅〜看取り、と全て主治医を経験した事例だった。

消化器癌でステント留置されている90代女性。本人には腸閉塞で詰まったから「金属の筒」が入っていると、がんの告知はなし。夫とは早い時期に死別。義理の母は本人が自宅看取り。長男は逝去し、長女、次女が別居の家族。

発熱で入院時、留置したステント周囲に腸腰筋膿瘍を形成していることがわかった。感染症の根治は目指せず、chronic supressionの方針となる。毎日、家に帰りたいと訴えていた。入院中は、毎週、他職種カンファレンスを実施、SWや長女、次女で方針を相談をした。本人の意向を汲んで、なるべく自宅でみていく方針に。主介護者は長男嫁だったが、病棟には一度も現れていなかった。

退院後の外来は、「やっぱり家がいい」。ERに時折受診することもあったが、その場の対応で解決することが多かった。
後日、主治医不在の時間帯の発熱で入院。改めて聞いてみると、本人は入院はしたくなくても、症状があると病院に行きたがるから、家族も悩んでいた。退院後は在宅療養の方針となる。

在宅診療を開始したところ、長男嫁は自動車を持っていないから受診ができないということがわかった。本人は「自分は夫の母親を自宅で看取って、ありがとうって言ってもらった。自分も家でなくなりたい」といっていて、嫁がプレッシャーを感じそうな状態だった。嫁は、家でみたい気持ちもあるが、不安も表出されていた。

そんな中、嫁が肺がん疑いで精査予定となった。そのため、長女から入院させてほしいという連絡あり。
関係者会議を開催。本人の「家にいたい」という思いを大切にしたい、ということを共有。デイサービスを増やしたり、長女のヘルプも入れるようになった。

主治医が他院研修中、長男嫁が緊急入院。長女が自宅に引き取り、介護をすることに。その後、ケアカンファを実施し、亡くなる前にもう一度自宅に帰してあげたいという話があがり、日中だけなんとか車椅子で戻った。嫁や近所の人など、会いたい人には会えた。
その後2週間後に長女宅で看取りとなった。

今回は主治医が変わらなかったこと、関連職種が連携施設だったことから、スムーズなケアが提供できた。
入院中のケアをうまく統合できても、外来へ移行するときに方針がブレることが多い。背景に、外来は医学的プロブレムの解決に焦点が置かれやすいことが考えられ、ケアの問題点が見えないことが多い。

組織を超えて連携をするときにどうやってスムーズな調整をすればよいのか、というのが課題になった。メールでの相談は結構便利だった。

ディスカッションでは、
看取った後に嫁がどう思っていたかは気になる。患者情報をやりとりできるSNSもある(例、メディカルケアステーション)。統合的ケアで出すなら、複数の健康問題を扱った感を出したほうがよさそう。
などが話題にあがった。

岡田先生からは、
いろんな部分が理想的で、家族志向でも、終末期でも出せそう。学びのところをどうまとめるかがポイントになりそう。統合的ケアのフレームワークの流行りは、垂直統合と水平統合。病棟を持っているジェネラリスト、持っていないジェネラリストはそれぞれに良さがある。世界的には病棟がないほうが一般的。日本から病棟のあるジェネラリストの在り方を発信できるとよい。いろんな場所でジェネラリズムを発揮できることを、Saultzは、包括性のところにあげている。継続性のところでいうと、同じ場所であること、同じ人であること、ケアの継続、ジェネラリズムの継続性とそれぞれが重要で、今回はそれが実現したケースと思われる。
対面したときしかケアが生じないというのがボトルネックになる。今後はオンライン診療などを含め、対面していない時間帯にもケアが継続できればという話題もある。
優秀な医師を育てるため、鑑識眼を養う必要がある。そのためには、本当によいものを知る必要がある。

参考資料:

Textbook of Family Medicine: Defining and Examining the Discipline, John W. Saultz

medical care station: https://www.medical-care.net/html/

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学