microbiology round

今回は、Lactobacillus gasseriでした。
70代男性で褥瘡感染からLactobacillus gasseri菌血症を起こした症例でした。

【Lactobacillus属について】
(微生物学)
グラム陽性通性嫌気性(微好気性)菌。消化管、生殖器の常在菌。デーデルライン桿菌とも呼ばれる。
グリコーゲンから乳酸を産生することで膣内pHを酸性に保っている。
ヨーグルト、チーズ、ワインや他の発酵物に採用されている。
ヒトから分離されるもので多いものは、L. rhamnosus, L. casei, L. fermentum, L. gasseri, L. plantarum, L. acidophilus, L. ultunensis 。グラム染色上の特徴としては、細長く時に竹の節状に連なることがあることと、芽胞がないこと。

(病原性)
滅多に人に病原性を発揮することはないので、検出された場合にはコンタミネーションを通常示唆する。
並存疾患がなければ病原性を持ったとしても低い。
エントリーとしては、消化管、口腔咽頭、女性生殖器。
リスク因子としては、腹部手術(特に肝臓移植)、消化管悪性腫瘍、HIV、DM、免疫不全、弁膜症、経静脈栄養、選択的消化管除菌、過去の長期間の抗菌薬投与(経口バンコマイシンも含む)。Lactobacillusによるprobioticsも時に関与している可能性がある。
カテーテル関連血流感染症の報告は現時点ではない(Johns Hpokins ABx guideより。一方サンフォードでは感染した静脈ラインを抜去せよと記載されている)。
真の感染症であった場合、死亡率は高率になる(1年間で50%以上)。

(臨床症状)
歯科:齲歯、歯周膿瘍
膿瘍:腹腔内膿瘍、肝脾膿瘍
菌血症:しばしば複数菌で引き起こす(Streptococcus、Candida、腸内細菌科GNRなどと)
IE:まれだが報告例がある
UTI:おそらくコンタミネーションであるが、繰り返し培養で検出され症状も矛盾ない場合は治療対象になる
絨毛膜炎:産後合併症として生じる
髄膜炎:新生児に少数の報告がある
肺炎:症例報告レベルだが、プロバイオティクスの誤嚥を含む

(治療)
ペニシリン系、クリンダマイシン
<抗菌薬感受性>
L. casei, L. rhamnosus, L. curvatus, L. fermentumなど多くの種で内因性にグリコペプチド耐性であるが、
L. gasseri/johnsonii,L. jensenii,L. acidophilus,L. crispatus,L. delbrueckii,L. iners,L. orisは感性であり、種によってグリコペプチドに対する感受性が異なる。
reviewでも引用されている一番大きいケースシリーズのL. gasseriのMICは1もしくは2(CID.2006;42:e35-44)。

(probiotics)
抗菌薬関連下痢症を減らすかもしれない
CDIを減らすかもしれない
女性の再発性UTIを防ぐかも知れない(経膣、経口投与)
UCやクローン病の病勢を抑えるかもしれない
ただし免疫不全者には使用は避ける(菌血症の報告がある)

写真は、上から順に血液培養グラム染色、血液寒天培地コロニー(小さい白色)、コロニーからのグラム染色です。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育