タントクセン病院@シンガポール その3

3月7日(木曜日)は、午前は病棟ラウンドのあと、infection control meetingの見学、午後はtravel clinicの見学をさせていただきました。

Infection control meetingは、毎週同じ時間に2時間程度開催されています。医師が4名程度、看護師やepidemiologistが10名程度参加していました。テーマは多岐にわっていました。病院のエアコンの管理をどうするか、工事中のアスペルギルス感染症、麻疹対策(近隣の国からの持ち込み、キャビンアテンダント)、インフルエンザ対策、結核対策、新入職員のN95マスクのフィットテストをどうやったら全員に受講してもらえるか、など。内容は、おそらく日本の状況と似ていると思われました。違いは、日本でいうところの感染管理認定看護師のような人が(おそらく)5名以上と多いこと、医師の参加が多いこと、epidemiologistが参加していること、職種を越えてしっかりと議論していること(結構、これって難しいと思います)、です。2時間でたくさんの議題を検討したあと、最後の2つ看護師さんがショートプレゼンテーションをしました。一つ目は、インフルエンザの院内outbreakが起こった時のフローチャートについてです。米国のCDCやインフルエンザ診療ガイドラインに沿った内容でしっかりと作成されていました。2つ目は、歯科領域での感染対策があまり進んでいないことから(これも日本と同じ悩みを抱えていると思われました)、米国・オーストラリア・英国のガイドラインを端的にまとめて、かつ、比較して、院内ガイドラインのたたき台のようなものを作成していました。かなりレベルが高くて、驚きました。

午後のtravel clinicは、とてもきれいで、かつ、広く、また、看護師さんも豊富で、とても恵まれた環境のようでした(あまりいい写真は撮れませんでしたが、雰囲気を感じてください)。診療内容は、亀田京橋クリニックとほとんど一緒で、時間あたりの来院者数も同等程度でした。進め方や説明していることもほぼ同じでした。自分が行っている診療が、先進的な医療施設と大差ないことがわかってちょっと安心しました。予診表をみつつ、どこに、いつから、どんな目的で、旅行するのか。どこに宿泊するのか、予定しているactivityはなにか、予防接種歴、travel clinicへの希望などを確認していき、最適なワクチン接種プランをコストともに提示します。また、各病気の説明も同時に行います。虫よけスプレーや高山病対策ついてもコメントしていました。また、travelとは関係ないですが、routine vaccineについても説明、今後検討するようにお話ししていました(高齢者であれば、肺炎球菌ワクチンと帯状疱疹ワクチン)。帯状疱疹ワクチンは、まだ不活化ワクチン(シングリックス)は認可されていないため、輸入して取り寄せる必要があるとのことでした。2回接種ですが、1000シンガポールドル(約80000円)もするので、だれも接種を希望していませんでした。受診する人は、ほとんどが弁護士などの高学歴者であり、質問も結構ハイレベルでした(なぜアルゼンチンではやっていない黄熱が、ボリビアやブラジルではやっているの?どちらにも蚊はいるでしょ?など)。しかし、意外とコストを気にしていて、A型肝炎ワクチンや腸チフスワクチンは接種しない人が多かったです。水と食事にはちゃんと気を付けるから大丈夫、と、どの人も言っていました。

これでだいたい一通り見学させていただけたと思います。明日以降は、もう少し細かいところまで観察して、日本での医療に役立てられることを見つけたいと思います。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育