タントクセン病院@シンガポール

現在シンガポールのタントクセン病院の見学をさせていただいております。規模や設備は、日本の病院をはるかに越えています。医療スタッフも豊富です。

https://www.ttsh.com.sg/aboutTTSH/

2週間の見学を予定しています。初日は、HIV外来とICU consultationを見せていただきました(診療そのものは日本とあまり変わりません、ただし耐性菌の多さにびっくりしました、MICUはESBLと多剤耐性緑膿菌だらけでした!)。2日目の今日は、午前中に一般感染症病棟のラウンドとOPAT(外来静注抗菌薬治療)外来の見学、午後はASP round(Antimicrobial Stewardship Program)を見学しました。

病棟は(写真は掲載できませんが)、アメリカの大学病院と雰囲気が似ていました(ただし2人部屋があります)。日本の部屋よりかなり広いです。感染対策グッズは、部屋の前にマスク・手袋・エプロン・アルコール手指消毒剤が設置されていて、ベッドの足側の柵にもアルコール手指消毒薬が設置されていました。接触予防策中の患者の部屋の前にはわかりやすく張り紙がしてありました(ほとんど亀田総合病院と同じ状況でした)。

設備は米国に近い印象を持ちましたが、概ね診療方法は日本と似ている印象を持ちました。研修医のプレゼンが、あまり教育されていないことや、結構CRPやプロカルシトニン、熱型を重視しているのも意外でした。

決定的に異なるのは、時間の流れでしょうか。外来でも病棟でも、一人一人の患者に対して、しっかりと時間をかけて診察・説明していました(外来は1時間にフォローアップの患者が、3-4人くらいです)。患者さんたちも、たくさん質問したり、自分の意見を言ったりしていて、よい感じでした。また、ほとんどの病棟の患者さんに家族が付き添っていて、それも強く印象に残っています(日本だと、めったに訪問者がいない患者さんも多いので)。

ASP roundは、個人的にもっとも興味をもって見学しました。聞き取れた範囲内だと、毎日午後に90分行っている、医師は日代わり(曜日で担当が決まっている)、薬剤師は固定で5名以上が対応(すごいマンパワーです!)、カンファレンスは1人の感染症指導医と5人の薬剤師で行う、1日5-10症例を検討する、Drがrecommendation noteを記載し必要があればその場で担当医に電話してdiscussionする、ただし診察には行かない(行くべきものは、感染症科にコンサルトしてもらう)、主治医がASP roundの方針に同意する可能性は80%以上、だそうです。
薬剤師さんによると、院内で使用されているPIPC/TAZ、カルバペネム、シプロフロキサシン(レボフロキサシンをどうしているか聞き忘れました...)をチェックして、介入が必要と思われたものをカンファレンスで提示している
とのことでした(ちなみに症例プレゼンテーションは薬剤師さんが行います!A 69 year-old gentleman with past medical history of DM and lung cancer presented...みたいに)。

病院の1階は、フードコートやカフェがたくさんあります。だいたい300-500円でしっかりと食事がとれて経済的です。

写真

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1:タントクセン病院(本院)

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2:national centre for infectious diseases(感染症病棟がある病院:タントクセン病院の向いにある)

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3:今日の昼食 約300円

というわけで、最初の2日間のご報告でした。当院のフェローシップでは、3か月間院外研修(エレクティブ)が可能です。興味のあるかたはぜひ見学に来てください!

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育