Journal Club

今日はMoody先生のJournal Clubの日でした。プレゼンターは、ローテーターの常石先生(安房地域医療センター総合診療科)でした。

''Accuracy of Lung Ultrasonography in the Diagnosis of Pneumonia in Adults, Systematic Review and Meta-Analysis'' (Chest 2017;151:374-382)

主に救急部門での話ですが、ベッドサイド肺エコーによる肺炎の診断の精度についてのCohort研究を集めてsystematic reviewとmeta-analysisを行った研究です。感度・特異度は非常に高く有用だ(胸部レントゲンの補助的なデバイスとなりうる)、という結論となっています。各研究のheterogeneityが大きいことや、エコーの技量に影響されることなどが、limitationと思われます。

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Facebook管理人としては、肺炎の診断にそもそもエコーは必要なのか?という疑問を持ちました。
もしエコーの有用性を示すのであれば、診断感度・特異度ではなく、治療成績へ向上(早期診断による?)、治療方針に影響を与えるかどうか、など示す必要があると思いました。
胸部単純X線写真では、ある程度の質的評価も可能です(胸部画像は、「存在」診断のみのために施行しているわけではありません。「質的」評価・診断においても重要な役割を果たします)。たとえば、浸潤影、粒状影、びまん性すりガラス影など区別して、鑑別疾患を考えることができます(咳・痰・発熱で来院した患者さんが、全員細菌性肺炎とは限りません)。これらの情報はエコーは与えてくれないように思います(仮に与えてくれるとしても、エコーの技量がかなり必要なのではないかと思います)。
また、どの程度の範囲の浸潤影か、胸部単純レントゲンでは明確にわかりますが、エコーでは炎症の範囲の評価は胸部単純レントゲンほど容易ではないと思われます。さらに、胸部単純X写真で診断できない肺炎であれば、基本的に軽症であるので、f/uして判断も可能であること(臨床的に疑わしければ肺炎として治療することもある)、それほど軽度の肺炎におけるエコーの感度は評価されていない(おそらく低いのでは?)ことなど、いろいろ思うところがあります。

現状のevidenceでは、あくまで診察と胸部単純レントゲンが診療の基本であり、エコーは補助的役割にとどめたほうがよいと考えます。外傷患者の気胸における肺エコーほどのimpactは、肺炎診療におけるエコーにはない、というのがこのpaperを読んだ最終的な印象です。今後、もしエコーで肺の炎症の鑑別(質的評価)が、CTのように可能になるのであれば、非常に有用かもしれませんので、今後の研究にはそれに期待したいと思います。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育