第14回:血液サラサラの薬とインプラント治療は関係があるのか?

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いわゆる「血液サラサラの薬」は心臓外科手術後、心筋梗塞(しんきんこうそく)、不整脈(ふせいみゃく)、脳梗塞(のうこうそく)など、患者さんの基礎疾患の予防や治療のために用いられているものです。抗血小板薬と抗凝固薬に分かれ、患者さんの病気の状態によって使い分けられています。近年では、従来からあった薬に加えて新しい薬が導入され、医科ではその使用が推奨されています。患者さんの基礎疾患をコントロールする目的で使用されますが、手術や検査で出血を伴う際に内服し続けていいのか?という不安や疑問を持つ患者さんは少なくないです。

代表的な抗血栓薬

抗血栓薬薬品名
抗血小板薬 プラビックス®
パナルジン®
エフィエント®
ブリリンタ®
プレタール®
バイアスピリン®
バファリン®
エパデール®
ペルサンチン®
アンプラーグ®
ドルナー®
プロレナール®
抗凝固薬 ワーファリン®
プラザキサ®
イグザレルト®
エリキュース®
リクシアナ®

大出血を伴う手術であれば休薬(薬の中断)や厳重なコントロールが必須となりますが、歯科治療において基本的に休薬は推奨されていません。むしろ、薬を中断した際に脳梗塞や心筋梗塞の発症のリスクが高く、最悪死に至る可能性があるため、リスクが大きい報告があります。特に患者さんご自身の判断による薬の中断は危険です。下記のような報告があり、中断することのメリットとデメリットを判断しなければいけません。

抗血小板薬を4週間中断した場合の脳梗塞発症はしない場合と比較して大きくリスクが高い<2005年の報告>
抗血小板療法を中断すると29%に血栓が発症し心筋梗塞や致死的な合併症を引き起こす<2007年の報告>
抗血栓薬内服継続での抜歯後の出血は1〜2%であり、2種類の内服も1種類の内服も差を認めなかった。<2011年の報告>

もちろん出血を伴う親知らずの抜歯やインプラント治療も休薬はしません。過去の報告は問題なく処置をすることができたものがほとんどで、安全性は確立しております。ただし、通常の患者さんより術中や術後の出血の可能性があるため、基本的に薬の知識や止血の技術に長けた専門医のいる機関で処置をすることが強く推奨されています。

200902img1.jpg当院では血液サラサラの薬の種類、量、年齢、腎機能、肝機能、他の内服薬との組み合わせなどを初診時、術前に把握し、出血を伴う処置を行う際は処置の時間、抗菌薬の内服の期間、痛み止めの種類などを考慮しながら安全な手術を心がけております。

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文責:歯科口腔外科 松田博之
◎インプラント治療をご希望の方は
松田博之医師をご指定ください。

このサイトの監修者

亀田総合病院
歯科口腔外科医長 松田 博之

【専門分野】
口腔外科、インプラント