第12回:骨粗しょう症とインプラント治療は関係があるのか?

投稿日:

骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症は骨の密度骨の質が低下し、骨折のリスクが増大しやすい骨格の病気です。骨は古いものが壊され新しいものを作り出す「骨代謝」を繰り返しています。つまり「骨を壊す」と「骨を作る」のバランスで強度を一定に保っています。しかし、年齢や女性ホルモンの影響により再生能力が衰えると骨を作る能力が低下します。こうして骨の密度(カルシウム量など)が低下することにより骨粗しょう症は生じます。また、生活習慣や基礎疾患によって骨の質(コラーゲン)が弱ることのより骨折のリスクが増大します。

200709img2.jpg

*丈夫な鉄筋コンクリートで例えると、鉄筋(コラーゲン)が劣化しても、コンクリート(カルシウム量)が劣化しても崩壊してしまう。

インプラント治療との関係

インプラント治療は骨の中にチタンのスクリューを埋め込み、そこに歯を製作する治療です(第一回コラム)。密度や質が低下した骨の状態に埋め込んだ場合、スクリューがくっつかないことや、抜けてしまうことが懸念されますが、そのような報告はわずかであり多くが影響なしとしています。実際、2018年に以下のようなまとまった報告がなされています。

2016年まででインプラントと骨粗しょう症について言及した600近い報告の中から信頼できる15本厳選しまとめたところ、骨粗しょう症を有する患者さんのインプラントの成功率は健常な患者さんと違いがなかった。また、術後に骨粗しょう症患者さんの方がインプラントの周りの骨の吸収が多かったがその差は0.18mmだった。

注意すべき状況

骨粗しょう症自体はインプラント治療に対するリスクはほとんどありませんが、その治療に使用している薬剤の種類によっては薬剤性顎骨壊死(がくこつえし)のリスクを考慮しないといけません。薬剤性顎骨壊死の原因は明確になっていません。しかし、骨粗しょう症の治療薬による骨代謝の変化が顎の骨を腐らせる可能性があり、そのきっかけの多くがは口の中の手術が多いと言われています。インプラント治療よりもむしろ抜歯をきっかけにすることが多く、点滴薬で1~2%、内服薬で0.01~0.02%の頻度で顎骨壊死が発症すると推測されています。前提として、これらの薬は治療薬としては非常に優秀であり、多くの方が使用して骨折などの生活に直結するトラブルを回避できています。しかし、顎骨壊死は長期に難治性のことが多く、注意を払うべきです。

200709img1.jpg

骨粗しょう症治療薬の種類、口の中の環境、全身状態、併用している薬によってリスクや対応方法が違うため、骨粗しょう症で治療薬を使用している方はインプラント治療だけではなく一般的な歯科治療の際も歯科医師にそのことを伝えることをお勧めします。

骨粗鬆症で歯科医師に伝えるべき薬の例

薬の種類薬品名
抗スクレロスチン イベニティ
ビスフォスホネート ダイドネル
フォッサマック
ボナロン
アクトネル
ベネット
ボノテオ
リカルボン
ボンビバ
抗RANKL プラリア

文責:歯科口腔外科 松田博之
◎インプラント治療をご希望の方は
松田博之医師をご指定ください。

このサイトの監修者

亀田総合病院
歯科口腔外科医長 松田 博之

【専門分野】
口腔外科、インプラント