不動寺センター長のERひとりでできるもん:第5話 危険生物の診療のやり方 〜マムシ、ハチ、ムカデ、クラゲ〜

KMC ERでの週に1回の不動寺センター長によるER Tipsレクチャーの模様です。
初期研修医やもっとERを学びたい後期研修医向けに一人でER当直を乗り切れることを目標としています。
このコラムを読んで、ER診療brush upの一助になれば 幸いです♪

※Tipsの一部を紹介

  • どのような時にマムシに噛まれたと考慮するか?
    マムシを見た、突然の激痛、20-30分頃により腫脹が強い、二つの平行した牙痕、じわっと出血
  • マムシ咬傷の症状
    全身症状、局所症状にわける。
    全身症状ではアナフィラキシー、凝固障害、横紋筋融解、眼筋麻痺、霧視、複視、視力障害が起こることがある。
    マムシの腫脹はgrade分類で分ける
  • マムシの応急処置は?
    →急いで下山して病院へいく
    (患肢を安静、動き回ると毒が回るのを早める。安静にしつつ早めの受診。)
  • マムシQ & A
    1.近位部を駆血するのは正しい?
    →駆血すると毒が停滞して組織壊死するので禁忌。縛った方がいいかは不明、リンパ経由なので指二本分くらい残して軽く緊縛するのは可。
    2.口で吸うのは正しい?
    →そんなに吸えないし、吸った人の口に傷があるとそこから毒が入る。吸った人の口腔内が腫れた事例がある。
    3.氷で冷やすのは正しい?
    →組織壊死を促す。
  • ERでの処置は?
    →アナフィラキシーに備え、反対則にライン確保。
    ・洗浄
    ・延長切開→乱切は効果なし。禁忌。
    ・毒の吸引→効果なし
    ・抗菌薬→効果なし。破傷風予防はしましょう
    ・目に毒が入る→15分洗浄
    ・抗毒素血清 →明らかな有効性は証明されていない。観察研究では腫脹、軽減が早いという報告がある。6時間以内が有効という報告もある。アナフィラキシーショックが3.2%,(東南アジアでは20%.別の報告では50%)、血清病が11.7%.ある。
    ・抗毒素血清はうつ?→リスクベネフィットを考えると、凝固障害、眼症状、2関節以上の腫脹の時、6時間後も腫脹が進展しているものを適応としている。亀田ERで投与する際はステロイド、抗ヒスタミンを使っているが効果があるかは不明、アドレナリンの予防投与はしていない。
  • ハチ刺症は怖いか?
    スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチ、クマバチの順でアナフィラキシーが多い。アナフィラキシーの多くは15分。
    大量に刺されるとおそらく蜂毒の積算で症状が現れる。
    ミツバチは針が残ることがあるので除去
    処方は抗ヒスタミン軟膏かステロイド軟膏、痛み止め
  • ムカデ(南房総の方言:ハガチ)にかまれたら?
    アナフィラキシーが起こることがある
    鎮痛、軟膏を検討
    疼痛強く、局所麻酔が有効なことがある
  • クラゲにさされたら?
    →海水で流す(真水は刺胞の破裂、酢酸の効果はあやしい)、温水(43-45℃)に20分浸す、シェービングでなくてプラスチックカードでこするだけでもよいとの報告もある

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科