EOLOA trial

Combes A, Hajage D, Capellier G,et al;
EOLIA Trial Group, REVA, and ECMONet. Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome. N Engl J Med. 2018 May 24;378(21):1965-1975. doi: 10.1056/NEJMoa1800385. PubMed PMID: 29791822.

【Research Question】
severe ARDS患者において、早期のECMOは標準治療に比べて60日死亡を改善するか

【解説】
CESAR trialではECMOセンターに搬送することで、ARDS患者の予後改善効果を報告したが、介入群ではECMOを全例が施行したわけではなくECMO自体の効果がは不明であった。本研究では重症度の高い7日未満のsevere ARDSに対して早期のECMO「戦略」が標準治療「戦略」と比較して60日死亡を改善するかを検証している。試験は世界64施設(多くはフランス)で行われた多施設オープンラベルRCTである。サンプルサイズは331人と計算され行った。
結果であるが、two sided triangular design methodologyにより「無益性」のため試験は早期中止となった。最終的に249例が割り付けられ、主要評価項目である60日死亡はECMO group 44/124 (35%) vs Control group 57/125 (46%)、Relative risk, 0.76; 95% confidence interval [CI], 0.55 to 1.04; P=0.09。RRR22.2,ARR10.1、NNT10であった。

【Implication】
強力な人工呼吸設定と支持療法をしても改善しないsevere ARDSにおいてECMOありの標準治療戦略と比べて早期ECMO戦略は60日死亡を改善しなかった。
 今回のRCTはECMOが有効かの純粋な検証ではなく、早期ECMO戦略とぎりぎりまで粘って必要ならECMOを行う標準治療戦略、つまり戦略と戦略の比較である。この点でどちらの戦略を選択しても有意差はないということが示された。問題は早期試験中止されているため結果の解釈が難しいことである。今回結果の信頼区間の幅は 0.55-1.04; P=0.09と早期ECMO戦略に良い傾向があるが早期試験中止の影響を受けているかもしれない。効果が有意とすればRRR 22.2,ARR 10.1、NNT 10と治療効果はかなり高い。次回のガイドラインでは推奨されてもおかしくない。また、two sided triangular design methodologyにより無益性のため早期試験中止されており、Under Powerであった可能性も残っている。一部の声でもほぼPositive studyと受け取っている人もいるようだが、あくまで戦略と戦略の比較でありECMO単独の効果は未検証と考えた良いだろう。しかし、倫理的にも今回のような戦略と戦略を比較するデザインでしかECMOのRCTは行えないかもしれず、今後のRCTはECMOをしない施設とする施設でのクラスターRCTであれば可能かもしれない。
 仮に早期ECMOにこのくらいの効果があったとして、今回の組入基準であれば、呼吸器設定もシビアであり、かなり重症なARDSである。個人的には年齢も加味してもECMOを施行しても妥当な重症度と思われる。問題は当院がPCVでPEEPを16-22mmHg程度で管理することが多いことだ。当院ではHigh PEEPで多くの場合、severeARDSは改善してEOLIAのECMO開始基準を満たさない可能性がある。おそらく今回の組入基準を満たすARDSは年に1-2人くらいだろう。また当院では高齢者が多く、敗血症の年齢の中央値が75歳程度であり、こういった集団のARDSでは改善が見込めないかもしれない。 重症すぎて差がつかないということもあるため腹臥位療法をするようなP/F<150が続く患者での早期ECMOだとどうかは気になるところだ。
その他にEOLIA研究はECMO開始基準、VVECMO中の管理としても他国の様子が伺えて面白い。また管理としてPaO2 65-95mmHgと高酸素を避けて管理していて感心した。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科