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Cluster-Randomized, Crossover Trial of Head Positioning in Acute Stroke. N Engl J Med. 2017 June 22;376;25

 様々な研究で仰臥位と脳血流の増加は相関していることは報告されており、脳卒中発症急性期は仰臥位にすることにより梗塞部位とペナンブラの血流を増加させることで予後を良くすると推察されることから、特に本邦では脳卒中発症急性期では慣習的に完全な仰臥位をとることが多く行われてきた。しかし、実際に脳卒中急性期のpositioningと臨床的な予後の相関を調べた大規模な試験はなかった。本試験は実際に臨床現場で起こる純粋なclinical questionに基づいた脳卒中急性期のpositioningと予後の相関の解明を試みたものである。
本試験は、診断後可及的早期にLying-flat(0°)の状態を24時間持続する群に対して、Sitting-up(30°以上) が、90日後の身体機能(modified Rankin scale)を改善するかを検証した。
 デザインはクラスターランダム化比較試験。ランダム化は本研究に以後は関わらない統計学者が施設ごとにランダム化し、隠蔽化、ITT解析はされている。またクロスオーバーもされている。
 結果は、5295人がLying-flat群、5799人がSitting-up群に割付され、90日後のModified Rankin scaleは有意差はみられなかった。また、重篤な有害事象・肺炎発生に関しても有意差はみられなかった。
本試験の強みは、臨床現場の大きなclinical questionである実際の転帰の差について解明を試みた研究であり、多国籍・他施設でアジア人も多くinclusionされており外的妥当性においては本邦にも適応できることである。しかし、実際に割り付けされたサンプル数が必要なサンプルサイズに達しておらずβエラーが起こっている可能性はある。また、クラスターランダム化されたことで介入者(治療者)のマスキングが出来ておらず各介入者が支持するpositioningが優位になるように患者をinclusion・exclusionされてしまっている可能性があり、本試験では各施設でinclusionされた患者からプロトコルに事前に記載されている基準に沿ってではあるがLying-flat群で6421人(54.8%)、Sitting-up群で5118人(46.9%)exclusionされており、exclusionされた数が多いこと・群間でexclusionされた割合に差があることから内的妥当性に問題があると考える。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科