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Albers GW, Marks MP, Kemp S, et al; DEFUSE 3 Investigators.
Thrombectomy for Stroke at 6 to 16 Hours with Selection by Perfusion Imaging. N Engl J Med. 2018 Feb 22;378(8):708-718. doi: 10.1056/NEJMoa1713973. Epub 2018 Jan 24. PubMed PMID: 29364767.

 脳梗塞は死亡の原因の第二位で、身体機能低下となる原因の1/3をしめる。これまで脳梗塞に対する血栓回収療法の適応は3-4時間であったが、この時間以降の効果が検証されてきた。本試験はproximal internal carotid (ICA) か middle cerebral artery (MCA)閉塞による改善可能な虚血脳組織を有する脳梗塞患者(Ischemic volume/Infract volume ≧1.8)に対して、6-16時間での血栓回収療法が、90日後の身体機能を改善するかを検証した。

 デザインはオープンラベル多施設並行群ランダム化比較試験で血栓回収療法+内科的治療と内科的治療単独での90日後のModified Rankin Scaleがどう変わるかを検証した。ランダム化はWebベースで行われ、隠蔽化、ITT解析はされている。この試験は中間解析で両群にp<0.0025の有意差がついたため早期試験中止となった。

 結果は、90人が血栓回収療法+内科的治療群、92人が内科的治療単独群に割付され、90日後のModified Rankin scaleは3 (IQR 1-4) vs. 4 (IQR 3-6)、OR 3.36(95%CI, 1.96 to 5.77; p=0.001)と血栓回収療法+内科的治療群の方が良かった。

 この研究の強みとして血栓回収療法の先行研究では7-8時間以降の脳梗塞には夜ご改善に関して有意差がなかったが、画像診断を付け加えて治療効果の高い集団を同定できたことである。

 研究の限界として、介入の性質上患者のマスキングができないこと、実際に脳梗塞と診断された患者の何割程度が本研究のInclusion criteriaを満たすのか不明であること、早期試験中止されたため治療効果を高く見積もっっている可能性があることが挙げられる。

 このDEFUSE3 trialによりAHA/ASAのガイドラインでも血栓回収療法の適応が6-16時間に拡大しており、Wake-up strokeも血栓回収療法の適応となったと言える。一体どのくらいの患者が血栓回収療法の恩恵に預かれるかであるが、米国の38の脳卒中センターで1年間に同意取得に至った患者が296例(Figure S1)であり、単純な割り算では概ね2ヶ月に1例、米国のERが日本の数倍以上の規模があることから考えると、適用になるのは亀田・安房では年間数例ではないかと推測している(Supplement のpage 4-5に非常に細かい選択基準がある)。またNeuroimaging criteriaを、初期研修医、ER後期研修医が"Mismatch"の判断できるようになることはあまり現実的ではなく、この判断を脳卒中医がいない状況で行うのは難しいかもしれない。現状、当院では脳卒中全例を脳外科・神経内科に相談し適応・非適応を検討している。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科