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Crit Care Med. 2017 May;45(5):766-773. doi: 10.1097/CCM.0000000000002283.
Liberal Versus Restrictive Transfusion Strategy in Critically Ill Oncologic Patients: The Transfusion Requirements in Critically Ill Oncologic Patients Randomized Controlled Trial.
Bergamin FS

TRICCやTRISS代表される輸血閾値に関する論文は我々の臨床に影響を与えてきた。そんな中で2017年に患者を固形癌があるsepsis患者に限った輸血閾値に関する研究がブラジルのサンパウロで行われた。
ICUに入室した固形癌がある敗血症性ショックの診断となった患者をHb<7で輸血を行う群(Restrictive群)とHb<9で輸血を行う群(Liberal群)にわけ、その28日死亡率をPrimary outcomeとした。Secondary outcomesとしては60日・90日死亡率、人工呼吸器や腎代替療法などのサポートが必要であったか、ICU滞在日数、ICU再入室率などを比較している。

先行研究より固形癌がある敗血症患者の28日死亡率を50%とし、輸血閾値を変えると16%死亡率が下がると仮定しサンプルサイズを計算し検出に全300例必要と計算している。コンピュータでランダムに割付され、どちらの群に割付されたかは患者と評価者は知らされていない。
両群間で患者の特徴には大きな違いはなかった。輸血量の中央値としてはRestrictve群では0(0-2)単位、Liberal群では1(0-3)単位であり、総輸血量としてはRestrictive群で212単位、Liberal群で314単位であった。Primary outcomeである28日死亡率には差がなかったが、Secondary outcomesの中で、90日死亡率においてRestrictive群の方がLiberal群に比べ死亡率が高いという、当初の仮定とは正反対の結果となった。RCTで患者の背景因子が自然と調整されるとはいえ、背景因子の中に癌のstageの記載がなく、全300例というサンプルサイズから偶然差がついた可能性も否めない。またブラジルの単施設研究でありこの結果が日本において適応できるかはさらなる検証が必要である。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科