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Acute kidney injury after computed tomography a meta analysis
Ann Emerg Med. 2018 Jan;71(1):44-53.e4. doi: 10.1016/j.annemergmed.2017.06.041. Epub 2017 Aug 12.

[Introduction]
明確に定義されていない造影剤腎症の懸念は、重要な疾患の診断に有用なツールである造影CTの使用を躊躇わせる可能性がある。造影CTと腎機能、死亡率、腎代替療法との関係性を示す必要性がある。

[Methods]
MEDLINE、Cochrane Library、CINAHL、Web of Science、Academic Search Premierにて関連論文を検索。PROSPERO registryに登録した。Includeされたものは、造影CTと腎機能、死亡率、腎代替療法との関係性を示してある論文。Excludeされたものは、小児、血管内治療、予防方法等の論文、Case report,、Review、ガイドライン、他のMeta-analysesは除外した。さらに2009-2016年までの主要journalを検索して追加した。Funnel plotでは出版バイアスは低いと見積もった。3人の著者で論文検索し、2人の著者はMcmaster universityのthe CLARITY groupによるバイアス評価指標を用いた。同じ研究は排除され、不詳なデータは個々の研究者にも連絡をとり、英語以外で書かれた研究も探した。統計はRandom effect modelを用いて、I2統計量により異質性も評価した。

[Results]
Datebaseから集めた14,691の論文の中から、28の論文、107,335人のデータを集計した。造影CTを撮像した群は造影CT撮像しなかった群に比べて、AKI (OR 0.94 ; 95%[CI] 0.83 to 1.07 I2=65% P<0.001)、死亡率(OR 0.83 ; 95%[CI] 0.59 to 1.16 I2=39.8% P<0.001)、腎代替療法(OR 1.0 ; 95%[CI] 0.73 to 1.36I2=19.9% P<0.001)、いずれも有意差はなかった。解析にmatchingを用いた6つの論文において、AKIの定義やmatchingの有無、Creのfollow upの時間、救急・ICU・入院患者などで、造影CT群は単純CT群と比して、有意差は示せなかった。

[Strengths]
RCTが行いにくい題材でデータ数が大きいメタアナリシスである。医療セッティング、腎機能、定義など異なる状況でのsubgroup解析を行い、異質性を排除する努力をしている。

[Limitations]
全て観察研究、後方視研究であること。外傷、入院患者、救急患者、集中治療患者など集めた対象に異質性が高いこと。さらに、後ろ向き研究であるので、介入(造影)と結果(腎症の発症)の両方に関連する交絡因子の全てが網羅されていない可能性がある。実際に選ばれた論文を読むと、多くの研究では未観測の脱水の有無、過去のデータとの比較、尿量と尿所見など言及されていない造影剤腎症の隠れたリスクが考慮しきれていない。

[結論]
観察研究のメタ解析である限界はあるが、造影剤腎症のリスクは検出できない程度に低い。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科