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日本における多施設共同前向きコホート研究である。救急経由で入院となった心不全患者における、救急受診からフロセミド投与までの時間と院内死亡の相関が調査された。

[methods]P: 救急から入院となった急性心不全の成人患者(緊急カテーテルの対象になった急性冠症候群は除外)で、E: 救急到着から60分未満にフロセミド静注が投与される群と、C: 60分以上24時間未満に投与される群で、O: 院内死亡を比較した。

[Results] 解析に残った1291名のうち、フロセミドを60分未満に投与された早期投与群は、60分以上24時間以内に投与された非早期投与群よりも、救急車での受診率、心不全徴候の頻度が有意に高く、収縮期血圧が有意に高かったが、カテコラミンの使用頻度や血管拡張薬にの使用頻度に有意差はなかった。フロセミド早期投与群は、GWTG-HF risk scoreで重症度調整し、施設をクラスタとしたランダム効果量も調整したGeneralised equation model (GEE)において、低い院内死亡と関連した(オッズ比 0.42 [95%CI 0.24-0.72])。

[Conclusion] 救急受診から入院となるような急性心不全患者において、早期にフロセミドを投与することは院内死亡の減少と相関する。

[批判的吟味] Strengthsとしては、prospectiveなコホートであること、GEEやPropensity score matchingなどさまざまな統計モデルを使用し、観測しえた共変量の適切な調整が行われている。 一方で、フロセミド投与が遅れた群において、肺炎やNSTEMIなど診断や治療が遅れる理由となった要因がunadjusted confoundersとして残ることがlimitationと考えられる。 ランダム化比較試験が難しい臨床疑問であり、複数の観察研究で外的妥当性が得られればプラクティスを変えうるインパクトがある。

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Matsue Y et.al. Time-to-Furosemide Treatment andMortality in Patients Hospitalized WithAcute Heart Failure. J Am Coll Cardiol. 2017 Jun 27;69(25):3042-3051.


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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科