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韓国の単施設ERを2012年12月から2013年10月に受診した、12時間以内の吐血または黒色便のエピソードの患者を、緊急内視鏡前1.エリスロマイシン(EM)250mg投与群、2.胃洗浄(GL)を内視鏡施行まで1時間毎施行する群、3.EM+GL併用群、の3群に分け、患者は非盲検、scopistに対し盲検化し内視鏡時の視界の良さのscore(4部位各2点、合計0-8点)を比較したpilot RCT。
背景として、EMはモチリン受容体アゴニストとして胃蠕動運動促進作用があり、糖尿病患者における消化管蠕動低下に用いられることがある。the American college of gastroenterology (ACG)ではmoderate-quality evidenceで緊急内視鏡前のEM投与が推奨されており、国際的にはclinicaly severeまたはactive bleedingの際に考慮するとされている。一方アジアではGLが好まれる傾向にある。
202人が適合し、159人が除外、43人がそれぞれEM群14人、GL群15人、EM+GL群14人に割り付けられた。χ2乗検定で検討され統計学的有意差はないが、視界点数はEM群8点(6-8)、GL群7点(5-8)、EM+GL群8点(8)、満足な視界が得られたのはEM群13例(92.9%)、GL群9例(60%)、EM+GL群13例(92.9%)でGL群で視界満足度が低い傾向にあり、EM単独でも十分に有効である可能性が示された。3群間で止血成功率、輸血数、死亡率などに有意差はなかった。

本研究では、先行研究があるがサンプルサイズ計算がなされずpilot研究としており、標本数が少ない(今後より大きい研究を予定しているのかもしれないが)。
除外条件にバイタル異常があるため軽症患者に偏っている可能性があり、国際的にEMが考慮されるactive bleedingな患者での検討がなされていない。バイタル異常除外の際の輸液量の記載がないこと、除外基準の肝硬変疑いの基準が明確でないこと、そもそも除外数がかなり多いこと、内視鏡の視界点数が術者や体位などにより異なる可能性など我々の検討でも多数の問題点が指摘できた。臨床応用のためにはこれらの曖昧な点を明確にした上で、多数症例でのRCTでの検証が求められる。

Erythromycin infusion prior to endoscopy for acute nonvariceal upper gastrointestinal bleeding: a pilot randomized controlled trial.
Hee Kyong Na, et al.
Korean J Intern Med. 2017 Mar 28. doi: 10.3904/kjim.2016.117.


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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科