軽症急性憩室炎に対する外来での抗菌薬治療の必要性

Journal Title
Efficacy and Safety of Nonantibiotic Outpatient Treatment in Mild Acute Diverticulitis (DINAMO-study): A Multicentre, Randomised, Open-label, Noninferiority Trial

論文の要約
背景:大腸憩室炎の標準治療は経験的に入院・抗菌薬治療であった。しかし、近年2つのランダム化比較試験において、合併症のない憩室炎の入院治療における抗菌薬の有用性は示されなかった。また、合併症のない憩室炎の外来治療は安全で効果的であることが報告されている。

方法: 本研究は、スペインの15の病院において合併症のない憩室炎に対する外来治療において抗菌薬の有無によって入院率や合併症に差がみられるか検証した非盲検・非劣性無作為化比較試験である。対象は18歳から80歳の成人で、救急外来を受診し、憩室炎に相当する症状を有する患者で、腹部CT所見におけるmodified Neff classification(mNeff)がグレード0と判定されたものとした。患者は、対照群(抗菌薬群):従来の治療(抗炎症・対症療法とは別にアモキシシリン/クラブラン酸875/125mg/8時間)または介入群(非抗菌薬群)にランダムに1:1に割り付けた。治療期間は7日間とした。来院後24時間以内に症状が改善しないものは、入院とし、研究には参加しなかった。臨床経過モニタリングは2、7、30、90日目に実施した。主要評価項目は入院割合であった。副次評価項目は、各群における救急再診回数、疼痛コントロール、緊急手術であった。サンプルサイズは非劣性マージンを7%、抗菌薬使用群の治療成功割合を93%、片側α0.025、パワーを80%、フォローロスを10%と見積もり460人とした。

結果:2016年11月から2020年1月までの849人がmNeffグレード0の軽症憩室炎と診断され、そのうち480名が、非抗菌薬群(n=242)または抗菌薬群(n=238)に無作為に割り付けられた。入院割合は 抗菌薬群14/238例(5.8%)、非抗菌薬群8/242例(3.3%)(平均差2.58%、95%信頼区間6.32〜-1.17)で、非劣性であることが確認された。救急再診割合は抗菌薬群16/238例(6.7%)と非抗菌薬群17/242例(7%)(平均差-0.3、95%CI 4.22〜-4.83 )であった。2日後のフォローアップにおける疼痛コントロール不良は抗菌薬群13/230例(5.7%)、非抗菌薬群5/221例(2.3%)(平均差3.39、95%CI 6.96〜-0.18)であった。

Implication
対象患者には、診断から24時間以内にVisual analogue scale≦4とならなかった患者に関しては研究に組み込まれていない。また、CT所見による憩室炎の重症度についてmNeffグレードが採用され、グレード0のみ対象としている。これまでの研究と比してより軽症患者が組み入れられている。本研究は、初の外来治療のおける抗菌薬フリーの安全性を検証した研究であることもあり、厳格に選択された軽症の憩室炎患者を対象にしていることに注意が必要である。また、オープンラベルでソフトエンドポインを採用しているため情報バイアスも懸念される。今後、軽症憩室炎に対して、抗菌薬フリーで外来治療されることが増えてくることが予想されるが、上記限界もあり、実臨床においては慎重に適応する必要があり、今後の追加試験の報告もフォローする必要がある。

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文責 芦名功平・南三郎


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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科