Journal Club

今週のJournal Clubはreview articleより...

 今年はAcute Respiratory Distress Syndrome(ARDS)が報告されて50年目という節目の年で、数多くのARDSに関する論文が報告されている。本論文はARDSの最新の知見がまとめられたReview Article。
 ARDSは報告されて以来統一した診断基準がなく、最初に定義付けられたのは1994年のAECC定義。その後2012年にBerlin定義として変更された。この定義に依然残っている課題は、1.重症度が死亡率と相関しない 2.定義自体が病態と一致しない 3.心不全との客観的な鑑別方法が明記されていない、などが挙げられている。
 本疾患は、発症様式や治療反応性が異なる群に分かれ、遺伝的素因も影響していると考えられている。「Hyperinflamatory Type」といったサブタイプが認識され、今後のさらなる報告が期待される。
 現時点の治療について、一回換気量、気道圧を減らした侵襲的人工換気が推奨される。腹臥位換気療法は重症低酸素血症をきたしたARDSに対し死亡率を低下させる。神経筋ブロック、ECMOについては研究段階である。厳格な体液管理により早期に人工呼吸器離脱できる可能性がある。死亡率減少に寄与する薬剤は現時点で存在せず、ヘパリンネブライザー、間葉幹細胞静注療法等は研究段階である。

Acute Respiratory Distress Syndrome
B. Taylor Thompson, et al.
N Engl J Med 2017 Aug 10.
DOI: 10. 1056/NEJMra1608077

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科