難治性心室細動による院外心停止に対する高度な再灌流療法

Journal Title
Advanced reperfusion strategies for patients with out-of-hospital cardiac arrest and refractory ventricular fibrillation (ARREST): a phase 2, single centre, open-label, randomised controlled trial

論文の要約
<背景>
院外心停止(out-of-hospital cardiac arrest -OHCA)かつ心室細動(ventricular fibrillation -VF)患者の半数は難治性であり予後不良といわれている。今までのコホート研究などではextracorporeal membrane oxygenation (ECMO)を用いると生存率が上昇する可能性が示唆されていた。しかし、高価かつ資源を大量に投資する治療法であるにも関わらずEvidenceに乏しい治療法であった。

<方法>
第2相、単一施設、オープンラベル、無作為化臨床試験で2019年8月8日から6月14日まで行われた。
対象患者は初期波形がVFであり3回の除細動で心拍再開が得られない18から75歳のOHCA患者、かつLund University Cardiopulmonary Assist System (LUCAS)が使用でき、搬送時間が30分以下の患者であった。除外基準はDNARの患者や鈍的・鋭的外傷、熱傷、溺死、感電、または既知の薬物過量投与が原因の心停止、囚人、ナーシングホーム居住者、妊婦、心臓カテーテル検査室が利用できない場合、末期がん患者、緊急冠動脈造影の絶対的禁忌(血管造影剤に対する既知のアナフィラキシー反応、活動的な消化管または内出血)であった。
主要評価項目は退院時生存であった。副次評価項目は退院時、退院後3ヵ月、6ヵ月後の生存と機能的に良好な状態(修正ランキンスコアが3以下、cerebral performance category scaleが2以下)であった。
Bayesian adaptive designを用いて、最初の30人は1:1にadvanced cardiac life support(ACLS)継続群とECMO導入群にランダム化し、その後は定期的に主要評価項目を評価し、その結果に応じて2群への振り分けを調整した。その際、コンピュータでのシュミレーションによって、typeIエラーを0.5、typeIIエラーを0.1となるよう調整した。定期的な主要評価項目における事後確率で優劣が98.5%以上となった場合は試験を中止することとした。解析はIntention-to-treatで行われた。
サンプルサイズはACLS群では12%、ECMO群では37%という治療効果を仮定し計算された。検出力90%、α0.05と仮定すると、必要なサンプルサイズは148人であり、退院前の離脱率15%などを考慮してN = 174と設定された。

<結果>
30人がそれぞれ1:1に割り付けられ解析された。ECMO群の1例が途中で同意撤回がされた。集団特性に差は指摘できなかった。
主要評価項目はECMO群6/14(43%)、ACLS群1/15(7%){risk difference 36%, 3.7-59.2; 0.9861 posterior probability}であった。副次評価項目はACLS群が3か月以内に全例死亡してしまったため比較はできなかった。ECMO群では経時的に神経学的予後は改善していった。

Implication
ARREST試験はECMOを用いた蘇生法が標準的なACLS治療と比較して生存率を向上させることを示した初めてのランダム化比較試験である。Limitationとしては今回の転帰は、経験豊富な循環器や集中治療医がいる環境で成り立っており、他の施設では適応することが難しいかもしれないと述べている。
この臨床試験の内的妥当性としては介入以外は均一化されておりかつハードアウトカムであることは評価できる。今回の試験では優位にECMO群の生存率が高かったが、早期中止されたことにより信頼区間が広く、効果量が過大に評価されている可能性がある。
単施設のオープンラベル試験でありかつ上記の環境的要因や併存疾患を有している患者が少なく高齢者も除外されていることから外的妥当性は低い。
今回の試験は今後蘇生方法を大きく変える可能性が示唆された。この試験は第二相試験であり、今後多施設での試験が行われ一般化できる根拠が出ることに期待したい。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科