超高齢心房細動患者における低用量エドキサバン

Journal Title
Low-Dose Edoxaban in Very Elderly Patients with Atrial Fibrillation
A phase 3, Multicenter, Randomized, Double-blind, Placebo-Controlled, event-driven trial
N Engl J Med October 29, 2020; 383:1735-1745
DOI: 10.1056/NEJMoa2012883

論文の要約
<背景>
非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対する直接経口抗凝固薬(DOAC)は、脳卒中(心原性脳塞栓症)予防のファーストラインの治療薬として推奨されている。しかし、高齢患者への投与については、出血リスクへの懸念から十分に行われているとは言いがたく、適切な投与量の判断がむずかしい。
筆者らは本研究で、これまで検討が行われてこなかった、標準用法・用量での投与が適用されない超高齢患者における経口直接Xa阻害薬edoxabanの有効性および安全性を検討した。

<方法>
日本の164施設で行われた二重盲検化ランダム化(ブロック法)比較試験である。患者群は、試験前1年以内に心電図、もしくはモニターにて観測された心房細動の病歴があり、CHADs2 score 2点以上の80歳の高齢者で、また通常用量での抗凝固療法が適応されない患者が組み込まれた。
介入群では、edoxaban(15mg/日)を1日1回投与され、対照群ではプラセボ薬が投与された。
有効性の一次エンドポイントは、脳卒中および全身性塞栓症の複合、安全性の一次エンドポイントは,ISTH(International Society on Thrombosis and Haemostasis)基準による大出血と設定された。
サンプルサイズはα 0.25、Power 80%と設定され、改善率は50%と予想されたため、914人のサンプルサイズが必要と算定された。
脳卒中または全身性塞栓症の最初のイベントまでの時間分析にはCox比例ハザードモデル 、死亡または原因別死亡の競合リスク分析には、Fine and Greyモデルに基づく競合リスク分析、有効性イベントの累積発生率は、カプランマイヤー法を使用して比較された。

<結果>
2016年8月から2019年11月の期間に登録された1086人の患者のうち、984人がランダム化された。そのうち492人がedxaban(15mg/日)投与群、492人がプラセボ群に割り付けられた。
有効性の1次エンドポイントではedxaban群15例、プラセボ群では44例であり、両群には有意に差を認めた。(2.3% vs 6.7%; HR 0.34; 95%CI 0.19〜0.61; p<0.001)
安全性の1次エンドポイントではedxaban群20例、プラセボ群では11例であり、有意な差は認めなかった。(3.3% vs 1.8%; HR 1.87; 95%CI 0.90〜3.89; p=0.09)

Implication
本研究では、80歳以上の非弁膜症性心房細動患者における低用量のedoxaban群(15mg/日)は、プラセボ群に比べ、大出血リスクを有意に増加させることなく、脳卒中および全身性塞栓症リスクを有意に低減させた。抗凝固薬が十分に投与されていない、超高齢化社会が背景にある日本においては、出血リスクの高い超高齢者に抗凝固薬の導入する際の根拠の一部にはなり得るかもしれない。
今回の研究では、多施設研究で、割付の隠蔽化がなされ、盲検化もおこなっており、設定されたサンプルサイズも超えている事などからは、内的妥当性は高いと考えられる。
今回は単一国での研究であり、人種の多様化もある日本で広く適応するには、他国での研究結果も合わせる必要はあるであろうが、出血リスクが高い群での検討は初めての試みで、今後の更なる研究にも期待できる。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科