急性虚血性脳卒中の患者において血管内再灌流療法による治療までの時間と転機の関連

[ Journal Title ]
Association Between Time to Treatment With Endovascular Reperfusion Therapy and Outcomes in Patients With Acute Ischemic Stroke Treated in Clinical Practice
Reza Jahan et.al
Jama 2019 Jul 16;322(3):252-263 PMID: 31310296

[論文の要約]
いくつかのRCTでは大血管閉塞による急性脳梗塞の患者において、発症早期で出血リスクが小さい場合には、内科的治療よりも血管内再灌流療法を追加したほうが有益とされている。早期の治療と利益には時間的依存が示唆されているがRCTは規模が小さく臨床に一般化することは難しい。また、時間の影響を考察する観察研究も不十分な状態である。今回Get With The Guidelines-Strokeを用いてデータ収集を行い後ろ向きコホート研究を行った。期間は2015年1月から2016年12月までに治療された患者で2017年4月15日まで最終追跡をし、調査解析は時間における変数に対してPearsonχ2試験、Kruskal-Wallis試験、時間と臨床的・有害事象の結果は多変量ロジスティック回帰分析で行った。対象は8時間以内に血管内再灌流療法がおこなわれた患者で、院外治療群、院内発生症例、時間経過により症状が改善、前方循環の閉塞ではい、必要データ欠損などは除外された。介入は時間であり4つの群に分けられた。Outcomeとして自宅への退院、退院時の独立歩行、退院時の障害がない(mRS 0-1)、退院時の機能的独立(mRS 0-2)、病院内死亡、ホスピスへの退院、36時間以内の有症状頭蓋内出血などが解析された。7044例が本研究に組み入れられ、自宅退院のオッズ比はOnset-to-PunctureTimeが0-120分vs 361-480分で2.43[1.81-3.27]、121-240分vs 361-480分で1.39[1.12-1.72]、241-360分vs 361-480分で1.12[0.91-1.39]であった。他の結果も同様であり、血管内再灌流療法までの時間がより短いことがよい転機と有意に関連していたと結論付けられた。

[Implication]
本研究では早期に血管内再灌流療法を行うことにより、機能的な面を含め予後を改善すると述べられている。転機については後述するが、時間同士の比較では早期に介入した群の方が転機や合併症の発生率が改善している。4.5時間までがその結果がより顕著であり、急性脳梗塞患者に対してはある時間までに治療介入を行うのではなくできる限り早く介入することが患者の予後を改善する可能性が高い。しかし、本研究の限界点であるが、治療を行わないコントロール群を設定することは不可能である。そのためコントロール群がないために比較ができず転機が改善したとは言えない。また、介入が遅くなる群の方が自然に改善した患者を含む軽症患者が減少する生存者バイアスが発生している。外的妥当性においても全症例がUrban locationのみの症例であり一般化可能性を低下させている。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科