脳出血後における抗血小板薬内服の有用性 -RESTART-

・Journal Title
Effects of antiplatelet therapy after stroke due to intracerebral haemorrhage (RESTART): a randomised, open-label trial
Lancet. 2019 May 21.PMID: 31128924 DOI: 10.1016/S0140-6736(19)30840-2

・論文の要約
血管閉塞性疾患の既往をもつ脳出血患者は珍しくなく、脳出血後に抗血小板・抗凝固薬が中止されることが多い。過去のランダム化試験では血管閉塞性疾患の二次予防としてアスピリンが有用であることは示されているが、この研究では脳出血患者が除外されており脳出血の既往がある患者における抗血小板薬の長期的な有用性については不明であった。本研究では、抗血小板抗凝固薬を内服していた脳出血患者の長期的な抗血小板薬使用の有用性について検討した。2013/5-2018/5にイギリス22施設の多施設ランダム化非盲検の前向き試験(PROBE法)を行った。抗血小板抗凝固薬を内服していたが脳出血後中止され、24時間以上生存している18歳以上の患者を対象とした。頭部外傷、梗塞性出血、妊婦授乳婦、避妊をしていない出産適齢年齢者、脳内出血を伴わない頭蓋内出血、同意取得困難者は除外された。出血部位・発症からの経過時間・抗血小板薬の種類・年齢・6ヶ月後の予想生存率・自立率の項目について適応的層別ランダム化し、抗血小板薬を再開する群と内服しない群に分けられた。抗血小板薬の選択・量は医療者の裁量に任された。プライマリアウトカムは脳出血の再発とした。先行観察研究を参考にコントロール群のリスクを1.8-7.4%/年とし抗血小板薬使用による様々なリスクを検討した結果、サンプルサイズを720名と設定した。実際は562名(75%)が解析対象となったが、割り付け前に医療者の同意が得られなかったことなどから25名が除外された。割り付け後に4名が死亡、16名が割り付け後に適応がないことが判明するなどして除外され、最終的に抗血小板薬再開群268名、中止群268名が分析された。対象者の2/3は男性で、7割が70歳以上、9割が白人で9割が血管閉塞性疾患の既往を有し、そのうち1/2はアスピリンを内服しており、6割が再出血リスクが高いとされる脳葉出血、抗血小板薬を開始する割り付け中央値は76日であった。期間中、内服アドヒアランスや血圧コントロール両群差がなく良好であり、追跡期間中央値2年間で99%をフォローアップした。結果はプライマリアウトカムの脳出血再発率は再開群4%、中止群9%(HR (95%CI) 0.51(0.25-1.03)p=0.06)、secondary outcomeでは主要な出血・血管閉塞イベントに有意差は認めず、総血管イベントは再開群で有意に低下した(HR (95%CI)0.65(0.44-0.95)p=0.025)。

・Implication
脱落者は少なくアドヒアランスや血圧など他の因子にも配慮した内的妥当性に優れた研究であったが、白人が9割を占めており、男性も多く外的妥当性はやや乏しかった。想定と異なり再開群で脳出血再発が低下傾向であったことについては、脳の微小血管循環・炎症が出血に関連しているという理論も言われており、それが関係しているとも考えられた。さらに2年間のフォローアップも追加されており、同様のトライアルで現在進行中のRESTART-FrとSTATICHの結果も待たれる。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科