Journal Club

侵襲性真菌感染症(以下IFI)の高リスク患者に対する経験的抗真菌薬投与に関する論文で、フランス19施設のICUで検証された二重盲検、parallel-group studyのRCT。

IFIに対する経験的抗真菌薬投与については2つの大規模な先行研究があり、CV留置、ICU滞在期間、挿管患者等で検証されている。しかしいずれも経験的抗真菌薬によるIFIの新規発症率の低下や死亡率の改善は示されていない。
それでもなお経験的な抗真菌薬投与はしばしば容認されている状況である。
今回は消化管以外の培養検体からカンジダcolonizationを認めている、ICU内発症の敗血症患者を選択し検証している。

28日目に生存しIFIがない患者はMCFG群では68%、プラセボ群では60.2% HR 1.35; 95%CI 0.87-2.08; P = 0.18 と有意差なし。その他90日生存、VAPの発症、SOFAスコア、βDグルカンの動向すべてに有意差は認めなかった。

問題点としては、IFIの高リスク因子である免疫不全、好中球減少患者が除外されており、エントリーは各ICUで平均して1年に4人程度と、非常に限定的な患者背景での検証であることが挙げられる。また今後免疫抑制患者、好中球減少患者での検証も必要と考えられるが、左記はIFIの高リスク群と判明している患者であり、対照群としてプラセボ投与を行うことは倫理的に可能だろうか。

Empirical Micafungin Treatment and Survival Without Invasive Fungal Infection in Adults With ICU-Acquired Sepsis, Candida Colonization, and Multiple Organ Failure: The EMPIRICUS Randomized Clinical Trial.
Timsit JF et al. JAMA. 2016 Oct 18;316(15):1555-1564.
doi: 10.1001/jama.2016.14655.

post17.jpg


Tag:, ,

このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科