救急外来での急性疼痛における静注アセトアミノフェンとヒドロモルフォンの有効性に関するRCT

Randomized Controlled Trial of Intravenous Acetaminophen Versus Intravenous Hydromorphone for the Treatment of Acute Pain in the Emergency Department
Douglas P. Barnaby, MD, MS etcl. Ann Emerg Med. 2019 Feb;73(2):133-140. doi: 10.1016/j.annemergmed.2018.06.019. Epub 2018 Aug 14.

[CQ] 救急外来での鎮痛は静注アセトアミノフェンと静注ヒドロモルフォンではどちらが有効か?

[Back ground]
米国では2015年に約50,000件の薬剤関連の死亡が報告されており、その半数以上がopioid関連であり、急性疼痛に関してもopioidではなく、acetaminophenで代替出来ないか議論になっている。

[Methods]
2017年6月から11月までの期間で年間175,000人が受診するAlbert Einstein College of Medicine/Montefiore Medical Centerでの二重盲検のランダム化比較試験である。 Patientsは7日以内に発症した急性疼痛を主訴とした21歳から64歳までの成人。 過去にacetaminophen,hydromorphoneで有害事象が起きた、24時間以内にトラマドールを含めたopioidの使用、8時間以内にacetaminophen/NSAIDsの使用、慢性疼痛がある、受診時Vitalが 収縮期血圧<100mmHg、脈拍<60回/分、SpO2<95%(room air)、アルコール、薬物中毒、妊婦、授乳中、相互作用の出る薬剤の使用、肝炎や腎不全など代謝系に影響が出るなどを除外した。
1gのacetaminophenを含む100mlのバッグに生理食塩水0.5mlのバイアルを用意した群と1mgのhydromorphoneを含む0.5mlのバイアルと生理食塩水100mlのバッグを用意した群で各々5〜10分をかけて経静脈投与での注入を行った。 試験薬の投与直前(0分)および注入完了後60分後に(時間60分)以前に0(無痛)から10(最悪の痛み)の範囲で痛みを評価した。 60分後に、追加の鎮痛薬の希望があるか質問し、希望があれば担当医の裁量で追加処方した。 嘔気嘔吐の有無は、0、5、30、60、90、120分に記録した。 掻痒は60分後に評価した。投与された全ての追加の投薬が記録された。 主要評価項目を薬剤投与60分後の疼痛の改善度とした。 2-tailedα=0.05、検出力90%、効果量を臨床的意義があると考えられるnumeric rating scale units 1.3とし、Sample sizeを196人と見積もった。

[Results]
Baselineはほぼ同等であった。
Primary Outcomeは60分後の疼痛の改善度とし、hydromorphone群(5.3[Standard Deviation2.8])はacetaminophen群(3.3[SD2.8])に比して2.0(95%confidence interval [CI], 1.2-2.7) と有意に疼痛改善を示した。
Secondary Outcomeの1つ目は更なる鎮痛薬の処方を拒否したかにおいて、hydromorphone群(67[65%])はacetaminophen群(47[45%])に比して21 (95%[CI], 8-35) と有意に拒否している。2つ目の60分前に追加の鎮痛を求めた場合どちらの鎮痛を受けていたかは有意差がなかった。 3つ目の嘔気嘔吐はhydromorphone群に有意に多く、掻痒は有意差がなかった。

[Implication]
Study designとしては、先行研究で指摘のあったSample sizeも満たし、質も担保されている。 今回はPatient Reported Outcome Measures (PROMs) を正しく評価できているかどうかがポイントであり、疼痛管理の裁量は担当医が行なっている以外はmaskingもなされている。今回の論文では、救急外来にて急性疼痛をきたす患者の鎮痛を優先させるならopioidが有用かもしれないが、嘔気嘔吐の副作用には注意が必要であるということが示された。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科