亀田メディカルセンター｜亀田総合病院 救命救急センター

Alhazzani W, Alshamsi F, Belley-Cote, Cook D, Guyatt G et al.
Efficacy and safety of stress ulcer prophylaxis in critically ill patients: a network meta-analysis of randomized trials. Intensive Care Med. 2018 Jan;44(1):1-11. doi: 10.1007/s00134-017-5005-8. Epub 2017 Dec 4. Review. Erratum in: Intensive Care Med. 2017 Dec 11;:. PubMed PMID: 29199388; PubMed Central PMCID: PMC5770505.

【Reviewer】Ryohey Yamamoto

【Summary】

• SR＋ネットワークメタアナライシスにより、臨床的に重要なGI bleedingはH2RAよりもPPIの方が優れていた。
• しかし、SUPを行っても全死亡はからず、PPIでは肺炎を増やしている可能性がある。
• 利益と害のバランスを考えるとルーチンなSUP処方は避けた方がよさそうだ。

【本文】
本研究はICU患者におけるStress ulcer prophylaxis(SUP)の効果と安全性について検証した系統的レビュー・ネットワークメタアナライシスである。
SUPはICU患者に広く使用されており、特にPPIがH2RAより処方されている。一方でSUPが肺炎、CDI、心血管イベント、死亡と関連するとも言われており、効果と安全性はまだ不確かであった。
この研究ではデータベースとしてCochrane CENTRAL, MEDLINE, and EMBASEを用いて、 2つのSRの検索式をUpgradeして使用して論文を検索した。 英語以外の言語も検索し、2016年3月までのRCTが対象となった。PRISMAガイドラインに従っており、論文の組入、除外の記載は見当たらないものの、スクリーニングに6人、質の評価にはコクランのRisk Of Bias（ROB)評価を用いて6人で、GRADEシステムが使用されている。
主要評価項目はClinical important GI bleeding（CIGIB）で副次評価項目として死亡、肺炎、CDIが検証された。
4139件から57研究、7293人を組み入れた。30研究がROB high、16件がLowであった。結果として、CIGIB抑制効果はPPI>H2RAであった。CIGIBは確かに抑制されるが、SUP使用による肺炎の増加があり、死亡には有意差はなかった。
本研究のLimitationとして、肺炎の定義の不一致、肺炎予防の戦略が研究の非一貫性、CDIの報告は１つしかなく統合できなかったこと、栄養管理の記載が確認できなかったこと、古い論文が組み入れられていることが挙げられる。
結論として中等との質のエビデンスとして、PPIが最も効果的なGIBを抑制する薬剤（Placeboと比較してARR1.6%）であったが、肺炎のリスクを上昇（ARI 3％）していた。利益と害のバランスを考えるとSUPをルーチンに使用することに疑問符が打たれた。

【Implication】
ネットワークメタアナライシスでも他の系統的レビュー+メタ解析と同様に、PPI＞H2RAでGIBを抑制するが、死亡に差はなく、PPIの使用で肺炎が増えるという結果であった。
注目すべきは、CIGIBを抑制する代わりに、肺炎を増やしいている可能性があること、全死亡に関してSUPの使用での信頼区間はすべて対照群に好ましい結果であることである。これだけみると利益と害のバランスは害に傾きそうである。SUPを代表するPPIで利益がまさる集団と害が勝る集団がいて、Totalの結果として死亡には差はなくなっている可能性がある。このことからもSUPを行う患者はより限定的になるべきであると考えられるが、まだどの集団で利益があり害があるのかはわかっていない。今後のPEPTICとREVISE trialの結果で考えていくことになるだろう。少なくともルーチンのPPI処方はやめ、利益が上周りそうな集団でSUPを行っていくべきと考えた。この結果と今年発表されたコクランシステマティックレビュー、経管栄養患者へのSUPの系統的レビュー・メタ解析を踏まえ、現在の救急の病棟管理として、SUPはかなり限定的にしか行っていない。
本筋とは関係ないが Guyatt先生が書いているというだけで結果を信頼してしまいそうになるのは何バイアスというのだろうか。