2021.11.18 抄読会

担当:初期研修医 関先生、指導医 柘植先生
Dose-dependent Respiratory Depression by Remifentanil in the Rabbit Parabrachial Nucleus/Kölliker-Fuse Complex and Pre-Bötzinger Complex
Barbara Palkovic, M.D.
Anesthesiology 2021; 135:649-72

背景 最近の研究では、オピオイドによる呼吸抑制が、Pre-Bötzinger ComplexとParabrachial Nucleus/Kölliker-Fuse Complexで部分的に逆転することが示された。本研究の仮説は、臨床的に適切な濃度のオピオイドによる呼吸抑制を、Parabrachial Nucleus/Kölliker-Fuse ComplexとPre-Bötzinger Complexにおけるオピオイド拮抗作用が完全に逆転させるというものであった。

方法 実験は48匹の人工呼吸された除脳された成体ウサギを用いて行われた。 著者らは、レミフェンタニルの静脈内投与によりベースラインの呼吸数を50%減少、あるいはレミフェンタニルのボーラス投与により無呼吸を生じさせ、Parabrachial Nucleus、Kölliker-Fuse Complex、Pre-Bötzinger Complexへのナロキソンの局所への注入(1mM、700nl)によりその回復を調べた。
別のグループでは、Pre-Bötzinger Complexのみにナロキソンを注入し、Parabrachial Nucleus/Kölliker-Fuse Complexへの注入がナロキソンの効果に影響するかどうかを調べた。最後に、μ-オピオイド受容体アゴニスト[d-Ala,2N-MePhe,4Gly-ol]-エンケファリン(100μM, 700nl)をParabrachial Nucleus/Kölliker-Fuse Complexに注入した。 データは中央値(25〜75%)で表示されている。

結果 レミフェンタニルを注入すると、呼吸数が36(31〜40)から16(15〜21)回/分に減少した。 両側のParabrachial Nucleus、Kölliker-Fuse Complex、Pre-Bötzinger Complexへのナロキソン投与により、呼吸数はそれぞれ17(16〜22、n=19、P=0.005)、23(19〜29、n=19、P<0.001)、25(22〜28)回/分(n=11、P<0.001)に増加した。 Parabrachial Nucleus/Kölliker-Fuse Complexにナロキソンを注射すると、17匹中12匹の動物で無呼吸が予防され、呼吸数が10(0〜12)回/分に増加した(P<0.001)。その後、Pre-Bötzinger Complexに事前に注射すると、すべての動物で無呼吸が予防された(13[10〜19]回/分、n=12、P=0.002)。Pre-Bötzinger Complexにナロキソンを単独で注入すると、鎮痛剤濃度が高いときに呼吸数が21(15〜26)回/分に増加したが(n=10、P=0.008)、無呼吸のときには増加しなかった(0[0〜0]回/分、n=9、P=0.500)。 [d-Ala,2N-MePhe,4Gly-ol]-enkeph-alinをParabrachial Nucleus/Kölliker-Fuse複合体に注射すると、呼吸数が3(2〜6)回/分に減少した。

結論 Parabrachial Nucleus/Kölliker-Fuse Complex and Pre-Bötzinger Complexにおけるオピオイドの呼吸抑制からの回復は部分的にしか回復しなかった。回復が部分的であったことから、これらの領域の活動を決定する呼吸駆動がオピオイドによって抑制されたことが指摘された。

関先生が果敢に基礎研究の論文に挑戦してくれました。
関先生が読んで感想で言っていましたが、基礎研究は日頃よく目にする臨床研究とは毛色が異なり、一見するとごくわずかな進歩にしかみえないですが、この一歩が次の新薬や臨床試験へとつながっていくと思うととても興味深かったです。
関先生、柘植先生ありがとうございました!

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 荻野

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療