2021.11.16 抄読会

担当:研修医 大場先生、指導医 川上先生

Neurolytic Splanchnic Nerve Block and Pain Relief, Survival, and Quality of Life in Unresectable Pancreatic Cancer: A Randomized Controlled Trial
Anesthesiology. 2021 October ; 135: 686-98.

切除不能膵臓癌において、内臓神経ブロックは疼痛を緩和、QOLを改善し、生存率を上昇させるか?

ステージIIIまたはIVの膵臓癌患者に対し、内臓神経ブロック群と生食によるプラセボ群で比較した中国のRCTでした。結論は、疼痛に関しては、内臓神経ブロック群は最初の3ヶ月は有意に疼痛が緩和されオピオイドの使用量も減量しましたが、6ヶ月以降は両群で差はなくなりました。QOLに関しては、最初の1ヶ月において内臓神経ブロック群で身体的健康スコアが改善したのみで、特に精神的健康スコアに関しては差はありませんでした。また、生存率に関しては、むしろ内臓神経ブロック群の方が特にステージIVの患者において生存率が低かったという結果になりました。筆者らは生存率が低下した原因について、神経ブロックによる交感神経の遮断が影響を与えたのではないか、という見解でした。

当院においても、ペインクリニックに内臓神経ブロックの依頼がくる患者さんは、ほとんどの場合ステージIVで余命としては1ヶ月程度の方が多いようです。全身状態が悪い患者さんに神経ブロックを施行することで、もしかしたら生存期間を短縮させている可能性もありますが、問題は何をゴールにするかで、最後の数日、数週間を痛みなく過ごしたいという要望を叶えているという点においては、評価されてもいいのではないかという議論になりました。したがって、どの病期に施行した方が良いのかは議論が分かれるところで、最後の手段としてとっておくというよりは、もっと早期から介入しても良いのではないかというのが当科の見解です。

大場先生、川上先生、ありがとうございました。大変勉強になりました。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 寺尾

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療