| 精子は、精巣でもととなる細胞から約75日かけて造られますが、精子が造られ成熟する過程の障害(造精機能障害)や射精までの間に精子が通過する通路(精路)の障害(精路通過障害)により精子数や精子の能力の異常として不妊の原因になります。造精機能障害が全体の70〜90%を占め、またその半分以上が原因不明であることが知られています。また、うまく性交できない、勃起しない、射精できないなどの性機能障害で悩まれているカップルも居られます。 |
| 一般的には、婦人科の外来で、排卵の時期に性交をして頂き子宮の入口に近い部分に運動精子がいるかを確認する性交後検査(ヒューナー検査)やマスターベーションで精液を採取してその精液中にいる精子の数や運動性、形を検査する精液検査により異常の有無を判断します。異常がある場合には、泌尿器科や不妊専門外来の受診を勧め、男性の診察、精密検査を行います。 |
| 精液中に精子が存在しない無精子症は、比較的稀ですが、遺伝性の病気や精巣がお腹の中に留まった停留精巣、思春期以降のおたふく風邪(流行性耳下腺炎)などの原発性精巣不全で起こります。また、性行為感染症で精路が塞がったり、鼡径ヘルニアの手術で誤って精管が結紮されたり、先天的に精路が形成されない場合には閉塞性無精子症となります。閉塞性無精子症では、外科的にうまく修復できなくても、精巣内には成熟精子の形成が見られることが多いために、精巣から精子を採取して顕微授精をすると妊娠させることが可能です。 |
精液検査で精子の濃度が低下する(乏精子症)、運動精子が減少する(精子無力症)、また正常形態精子が減少する(奇形精子症)場合には、妊娠の能力は低下します。多くは原因不明ですが、内分泌の異常、薬物治療の副作用(胃潰瘍治療薬、降圧剤、抗がん剤の一部)、喫煙や過剰な飲酒、ストレス等の環境要因の他に、頻度的には多い精索静脈瘤が問題になります。
精索静脈瘤は、 陰嚢内の静脈が怒張・うっ血している状態で、不妊治療で受診する男性の35〜40%、一般男性の10〜15%にあります。精巣の温度の上昇と血液のうっ滞が精子の形成に悪影響を及ぼすようですが、視診と触診で診断可能で、おおよそ半分の方では手術により精液所見の改善と妊娠率の向上が見られます。 |
| 原因に応じて、治療法が選択されますが、原因不明の場合も多く、漢方薬やビタミン剤などの薬物療法には限界があります。精液の所見にもよりますが、子宮内に洗浄・濃縮した精子浮遊液を排卵期に注入する人工授精、あるいは体外受精・顕微授精という生殖補助医療技術を用いることで約85〜90%の男性不妊は治療が可能になったと言われています。 |
子供が欲しいのに、パートナーが妊娠しない男性で、
- 性行為感染症(淋病、クラミジアなど)に感染したことがある
- 泌尿器系や鼡径ヘルニアの手術歴がある
- 性交渉が困難なことがある
- 思春期以降におたふくかぜに罹ったことがある
- アルコールやたばこ、薬物の乱用をしたことがある
- 抗がん剤による治療や放射線療法を受けたことがある
場合には不妊症専門医ないし泌尿器科医に相談する必要があります。 |
| 文責:不妊生殖センター長 己斐 秀樹 |