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膝関節軟骨修復の再生医療

2019/8/15

近年、再生医療に注目が集まっています。従来の方法では修復不能な膝関節・広範囲軟骨欠損に対して自家培養軟骨移植術が保険適応となり、当院においても積極的に行うようになっています。今回は軟骨損傷およびその治療法についてお話しさせていただきます。

関節軟骨は滑らかな関節運動(潤滑性)や荷重時の衝撃吸収などの役割を担っています。これは、80%の水分とⅡ型コラーゲンとプロテオグリカンを含む豊富な細胞外基質によるもので硝子軟骨と呼ばれています。関節軟骨は4層構造を持っています(図1)。層状構造であるため、圧迫力には耐久力がありますが、擦るような動き(剪断(せんだん)力)には弱いのが特徴です。軟骨損傷は若年者のみの疾患ではありません。強い剪断力が加われば、子供から中高年の方まで起こり得ます。さらに、関節軟骨は神経も栄養血管もリンパ管もなく、細胞成分に乏しいため、自然治癒が難しいと考えられています。

  • 図1.関節軟骨の4層構造


関節軟骨損傷は、歩行時や曲げ伸ばしの際の痛みや強い引っかかりを自覚します。関節内の炎症が持続すると関節内にお水が溜まります。自覚症状は日常生活に支障を来すレベルからスポーツ後の腫れや痛み程度まで差があります。一度傷ついた軟骨は放置すると、剥がれ落ちた関節軟骨周囲の正常軟骨まで徐々に剥がれていきます。そのため、痛みやひっかかりを我慢して生活していると、広範囲の軟骨損傷となり、最終的には変形性膝関節症となります。

これまでの膝関節の軟骨損傷に対する治療はどうだったのでしょうか?若年者の外傷性軟骨損傷や離断性骨軟骨炎(軟骨の下の骨ごと剥がれる病態)には、骨軟骨柱移植(非荷重面の骨軟骨柱を軟骨欠損部位に移植するもの)(図2)や骨髄刺激法(骨髄まで穿孔して出血させて線維軟骨組織による修復を期待するもの)(図3)が行われていました。しかし、40~50代の軟骨損傷に対しては積極的に軟骨修復手術を行うことは稀でした。おそらくヒアルロン酸注射やリハビリテーションなどで保存療法を継続し、年齢とともに状態が悪化した時点で人工膝関節置換術を考えるのが一般的であったと思います。

  • 図2.骨軟骨柱移植術.(a)軟骨欠損.(b)骨軟骨柱移植後.(c)術後1年.

  • 図3.骨髄刺激法.(a)軟骨欠損.(b)骨穿孔施行直後.(c)術後1年.


しかし、当院スポーツ医学科では積極的に修復する治療方針をとっています。治せる軟骨欠損をなぜそのままにするのかと思います。従来から行われている骨軟骨柱移植術や骨髄刺激法では十分な軟骨修復が行えない症例に対し、再生医療である自家培養軟骨移植術で対応できるようになっています。

自家軟骨培養移植術の方法について簡単に説明します。移植に先立って、約0.4g程の正常軟骨組織を採取する必要があります。培養施設に送られた軟骨組織から、4週間かけて3次元培養軟骨シートを作成します。軟骨欠損部に培養軟骨シートを移植し、骨膜や人工コラーゲン膜で被覆します。移植した自家培養軟骨は、当初はお豆腐のような柔らかさですが、経時的に硬度を増し、1年で正常軟骨に近い硬度となります(図4)。

  • 図4.自家培養軟骨移植術.(a)広範囲軟骨欠損.(b) 3次元培養軟骨シート.(c)術後1年.


かつては治せないものとあきらめていた関節軟骨が、再生医療によって治せる時代が来ています。まだ、全国的に症例数も多くありませんし、長期成績も出ておりません。しかし、当院は全国でもトップクラスの症例数を誇っております。慎重に治療してきた結果、満足していただいた患者さまのクチコミで多くの症例が集まってきています。膝関節に関する症状でお悩みの方の中にこの治療法で救われる方がおられる可能性があります。ぜひ、スポーツ医学科までお問い合わせください。

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スポーツ医学科 加藤有紀