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メスを使わない究極の保存療法多血小板血漿療法

2019/7/1

今回は、スポーツ医学科で行っている、最先端の再生医療PRPについてご紹介させて頂きます。

PRPとは日本語では多血小板血漿(けっしょう)療法、英語のPlatelet-Rich-Plasma therapyの略語です。以下PRPと記します。PRPは患者さまご自身の血液から血小板という細胞が高濃度に含んだ液体を生成し、注射により体内の損傷部位に注入するという治療です。

この血小板細胞の役割は、以前は体から外出血した際に血小板凝集し瘡蓋(かさぶた)を作る一時止血が主な機能と言われていましたが、近年は研究が進み、血小板から放出される成長因子が、傷んだ組織の再生を促進させることがわかってきました。さらに、生成されたPRPの成分の中には、痛みの原因となる炎症性サイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)の分泌抑制や、阻害をする成分も含まれており、組織修復と抗炎症と二通りの作用機序から、損傷部位の除痛効果が得られます。PRPは美容形成領域では、顔の皺を取るアンチングエイジング治療として早くから普及していますが、この作用を応用し、非常に治りが悪く治療に難渋していたスポーツ障害にも適応が広がっています。

当院では、厚生労働省から、再生医療認定施設の認可を受け、このPRPを超音波断層像(以下エコー)を用いて、靭帯や、腱、筋肉の損傷に対して効率的に行っています。

専用の注射器で採血した15mlの血液を5分間遠心分離を行いPRPを生成します【写真1】。そして、事前にエコーで損傷部位を確認し、エコーガイド下に的確にPRPを損傷部位に注入しています【写真2】。


診療の実際として、テニス肘(肘外側上顆炎)、ゴルフ肘(肘内側上顆炎)、ジャンパー膝(膝蓋靱帯炎)、足底腱膜炎、そして野球投手の内側側副靱帯損傷に当治療を行い、良好な成績を得ています。特に、野球選手の肘内側側副靱帯は、アメリカメジャーリーグで活躍している、大谷翔平選手、ダルビッシュ有選手などのように断裂をした場合は、いわゆるトミー・ジョン手術(靭帯再建術)が必要とされています。しかしながら、当科では、この肘内側側副靱帯断裂に対してPRPを積極的に行い、エコーガイド化で損傷部位を針で新鮮化の後、PRPを注入することで良好な成績が出ております。勿論、PRP後症状が軽快せず手術に移行した例も数例ありますが、断裂の程度や部位によってはPRPで手術を回避でき、治療効果が得られる可能性もあることを研究報告しています。

しかしながら、急性期の肉離れや、関節軟骨の再生などPRPの効果が証明されていないものも少なからずあり、PRPはその効果には依然賛否が分かれているのも事実です。当科では、スポーツ障害へのPRP症例は国内で症例数も多く、成績も良好なことから引き続き積極的に行っていきますが、これに加え、今年度より新たに厚生労働省から再生医療施設Ⅱ種認定の認可を得られ、これまで出来なかった、膝などの関節内にPRP注入をできる環境が整いました。

関節軟骨への再生効果は根拠が得られていませんが、炎症性サイトカインの分泌を抑え、膝の除痛に関しては効果は報告されています。当科は、未だに明らかとなっていないPRP治療の臨床成果を国内外に発信することも大切な役割と考えています。

スポーツ医学科のご案内

スポーツ医学科 山田 慎