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圧迫骨折と経皮的椎体形成術

2007/12/01

脊椎の圧迫骨折は強い腰背部痛を来します。「起き上がるのが辛い」「寝返りで背中が痛む」「立ってしまえば何とか歩ける」と言った訴えが多く聞かれます。骨が弱くなっている方では、転倒などの契機なく徐々に発症する事が多い病気です。

圧迫骨折の治療

1)保存的治療

骨粗鬆症に伴う圧迫骨折においては、基本的な治療方針として、脊髄や神経への圧迫がないかあるいは軽度であれば、ベッド上安静と患部固定のうえ、疼痛に対して投薬コントロールを行うというのが一般的です。しかしながら、この場合ベッド上安静は3ヶ月以上に及び、高齢患者では長期入院に伴う痴呆症状の出現などが問題となってきます。

2)固定術

椎体の圧迫変形が進行する場合には、従来は手術による固定術などが行なわれて来ました。

3)新しい治療

経皮的椎体形成術を行えば、骨の強度が高まり、疼痛が緩和することから通常1~3日後には歩行可能になることが多く、安静期間の短縮をはかることができます。

経皮的椎体形成術

経皮的椎体形成術とは、悪性腫瘍の椎体への骨転移や骨粗鬆症に伴う圧迫骨折の疼痛緩和や安定性増強のために、透視下に椎体を経皮的に穿刺して穿刺針を通して骨セメント(PMMA = polymethylmethacrylate)を注入する手技です。80%以上の症例で3日以内に高い除痛効果が得られるとされ低侵襲と即効性が注目されています。

1987年フランスでGalibertらが最初に報告し、以後1990年代後半から欧米では優れた効果が報告されました。本邦では1997年に馬場らにより最初の報告がなされ、以後多施設で施行されるようになってきています。さらに、厚生労働省がん研究助成金による「がん治療におけるIVRの技術向上と標準化に関する研究」班(荒井班)で多施設による臨床試験も行なわれ、今後普及する治療法であると思われます。

原理

除痛効果の原理は解明されていません。骨折部位の固定化が骨膜刺激を軽減するという説がもっとも支持されています。さらに骨セメントの化学的刺激や90℃に及ぶ重合時の温熱効果が神経終末に作用するという説も唱えられています。

適応

  • 圧迫骨折が原因で疼痛・神経障害を訴えている患者さま
  • 骨粗鬆症や外傷による圧迫骨折
  • 悪性腫瘍の転移、原発性骨腫瘍(骨髄腫や血管腫など)による病的圧迫骨折
骨折自体による痛みに効果がありますが、神経が圧迫されて生じる神経痛などには効果がありません。治療を行う前に痛みの種類と原因を良く調べ効果が期待できると判定した場合のみ施行します

禁忌

  • 急性期感染症
  • 出血傾向(ワーファリンなどを服用している方は休薬が必要です)
  • 重篤な心疾患

治療の時期

骨折から早い時期のものの方が効果が高い様ですが、まず安静臥床や鎮痛剤などの保存的治療を試みて、無効であった場合に施行します。長期間の安静で疼痛が遷延したり、廃用で寝たきりになる可能性を減らす事が出来ます。1年以上経過した圧迫骨折でも、MRI検査で治癒していないと考えられた場合は治療する事もあります。

合併症

一般に経皮的椎体形成術は安全性が高い事が認められていますが、僅かではありますが合併症の報告もあります。出血、感染、神経損傷、肋骨骨折、PMMAの逸脱による神経圧迫、静脈塞栓症、肺塞栓症、呼吸不全、心不全、腸閉塞、骨セメントや薬剤などに対するアレルギーや血圧低下などが起こりうる合併症として挙げられます。このうちで、神経損傷、肺塞栓、心不全などを来す事は稀ですが、起こった場合は死亡したり、後遺症を残す可能性もあります。また一般に骨粗鬆症では、一度脊椎圧迫骨折を起こすと、その後1年以内に隣接椎体などに新たな圧迫骨折を起こす事が多く、その確率は10%~25%とされています。

治療の流れ

2泊3日の入院で治療します。椎体形成術は透視室で局所麻酔下に施行し、1時間程度を要します。治療後は2時間の臥床安静とし、それ以降の食事は座って食べる事が出来ます。新たな圧迫骨折を予防する為に術後は骨粗鬆症の治療を継続する事が望ましく、ビスフォスフォネート系の薬剤を処方します。

費用

経皮的椎体形成術は2000年にFDAで認可されるなど、欧米では一般的治療となっていますが、本邦では保険適応が得られていないことから自由診療(自費診療)での治療となります。混合診療は認められておりませんので、この治療を受けられる場合には、手術にかかる経費のみならず、手術の為の入院費、検査費用などの全額を自費にて御負担頂く事になります。また、注入に使用するセメント(PMMA)は整形外科、脳神経外科や歯科領域では広く骨充填材料として使用承認を得ておりますが、脊椎椎体内への注入に関しては我が国ではまだ承認されておりません。数年前までは急速注入に伴って死亡例もあった事から、医薬品・医療機器等安全性情報(No.216等)などを通じて、骨セメントの椎体形成術での使用に対して厚生労働省は警告を発しています。

総括

経皮的椎体形成(PVP;セメント治療)

高い有効性 保存的加療無効例が対象
新たな治療 厚生労働省未承認
自由診療 健康保険は使わずに全額自費

手術は局所麻酔下に腹臥位で行ないます

血管内治療用の高精度の透視装置を使用します

正面と側面の透視画像を見ながら針を進めます

必要に応じて、コンピュータで刺入角度を計測します

セメント少量(0.05から0.10ml)注入する毎に透視を確認し、セメントの逸脱を監視します

必要に応じて3次元透視画像を使用して精確を期します

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脊椎脊髄外科 石井 一彦

脊椎脊髄外科診療内容