背骨のケガ(脊椎脊髄損傷)について
2015/1/1
-寒さが厳しいこの季節。心配なことが一つあります。
「心配なことって何ですか?」
-それは、お年寄りのケガが増えることです。毎年、本当に心配しているんですよ。
今回は背骨のケガ「脊椎脊髄損傷」のお話をします。
脊椎脊髄損傷について
背骨に大きなエネルギーが加わると、背骨が折れてしまったり(骨折)、ずれてしまったり(脱臼)することがあります。
背骨の中には脊髄(太い大切な神経のことです。忘れてしまった方は第1話からもう一度読み直してください)が通っています。
背骨が損傷すると、同時に脊髄も障害されてしまいます。これを『脊髄損傷』といいます。
一瞬にして四肢麻痺、手や足が動かなくなってしまい、寝たきりまたは車いすの生活になってしまいます。
脊椎脊髄損傷、略して「脊損(せきそん)」と呼んでいます。
-どのような年代に多く発生すると思いますか?
「ケガって、若い人に多いんじゃないですか?」
-いいえ、違います。「お年寄りの割合が圧倒的に多い」と覚えておいてください。
交通事故やスポーツ外傷による脊損は若い人に多く発生しますが、近年は高齢者の脊損が急速に増加しています。
亀田病院では、夏はサーフィンやダイビングのようなマリンスポーツによる若者の脊髄損傷、一方冬は転倒・転落による高齢者の脊髄損傷が多い傾向があります。
年末になると大掃除やお正月の準備のために、脚立(きゃたつ)に登って木の剪定をしたり、いすに乗って高いところの片付けをしたりします。バランスを崩して転落、そして脊損、・・・、骨は固定術などで治療することができますが、脊髄はいったん痛んでしまうと回復しません。十分に気をつけてくださいね。
次の画像は65歳、男性、典型的な頚椎の脱臼骨折の例です。 | ![]() |
軽微な外傷による脊髄損傷
脊髄が圧迫を受けていると、ほんの軽微な外傷でも重症の麻痺を来すことがあります。 | ![]() |
結論から言うと、画像だけで患者さまの症状は推測できません。Cさんも転倒直前までは全くお元気だったのですから。
どのくらい脊髄が圧迫されているかは重要ですが、どのタイミングで手術を受けられるかはもっと重要です。
手が使いにくくなったり、転びやすくなってきたなと感じたら、いよいよ具合が悪くなる前に脊椎脊髄外科を受診してください。
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫