キアリ奇形と脊髄空洞症について
2014/12/1
-今回は『脊髄空洞症』というとてもめずらしい病気のお話です。
脊髄空洞症は頻度の低い疾患ですが、私たちがライフワークの一つにしていることもあり、亀田総合病院には多くの患者さまが治療にいらっしゃっています。
脊髄空洞症は英語では「シリンゴミエリア(シリンクスのようになった脊髄という意味です)」と呼ばれていますが、この名前の由来となった美しい妖精『シリンクス』のお話もしましょう。
パンの神とシリンクス(ギリシア神話から)
パン(英語ではフォーン)の名前を聞いたことがありますか? | ![]() |
脊髄空洞症
脊髄の中に水がたまり、あたかも空洞になってしまったような状態を「脊髄空洞症」と呼んでいます。英語ではこの空洞を「シリンクス」と呼ぶのは先ほどお話ししたとおりです。
脊髄空洞症は単独の疾患では無く、①キアリ奇形(小脳の一部が脊柱管内に落ち込んでしまっている状態)、②脊髄外傷、③脊髄くも膜炎、・・・など、いろいろな疾患による二次的変化として、脊髄内に空洞が形成されると考えられています。
以前はきわめてまれな病気と考えられていましたが、MRIの普及により診断が容易になり、沢山の患者さまが治療を受けられるようになってきました。
脊髄空洞症では脊髄の機能が、数年~10数年かけてゆっくり低下します。知覚鈍麻や筋力低下が主な症状ですが、痛みや温度に対する感覚(温痛覚)は発症初期より障害されることが多く、このためやけどやけがをすることが多くなります。 | ![]() |
脊髄空洞症の治療
今でも手術が唯一の治療法です。 | ![]() |
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫