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腰部脊柱管狭窄症

2014/6/15

「おらぁ、漁をしてるときゃ何でもねーだよ。でもヨー、陸(おか)に上がるとからっきしだめだ」

-ベテラン漁師のSさん、日に焼けてたくましい体をしている。少し腰をかがめるようにして診察に入ってきた。
 漁をしているときは全く症状が無いのに、船をおりると足がしびれて50Mも歩けないのだという。

脊椎変性疾患

第2話を思い出してください。「体を支える(支持)」「体を動かす(運動)」そして「神経の保護」―この3つが背骨の大切な役割だとお話ししました。
ところが、脊椎とその周辺組織(椎間板や靱帯)が傷んでくると、本来、護(まも)っているはずの神経を逆に圧迫したり損傷したりするようになります。
これを「脊椎変性疾患」と呼んでいます。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、「椎間板ヘルニア」「頚椎症性脊髄症」「後縦靱帯骨化症」「黄色靱帯骨化症」「腰椎すべり症」などみんなこの脊椎変性疾患に分類されます。
現在まで2,000例を超える脊椎手術を行ってきましたが、このうち6割、約1,200例が変性疾患に対する手術でした。

今回お話しする「腰部脊柱管狭窄症」はその代表的疾患の一つです。

腰部脊柱管狭窄症

背骨には「脊柱管」と呼ばれる神経の通り道があります。腰の脊柱管が狭くなったものが「腰部脊柱管狭窄」です。

―イラストを見てください。

前方には椎間板、後方には椎弓や椎間関節が見えていますね。真ん中の三角形の隙間が「脊柱管」です。脊柱管狭窄症にはいろいろなタイプがありますが、一番多いのはこのイラストのように黄色靱帯が厚くなって(肥厚)脊柱管を狭めてしまうタイプです。
腰部脊柱管狭窄症は高齢者に多い病気です。歩くと足がしびれて座りたくなります。そして、休むとまた歩けるようになります。これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。
腰を伸ばすと脊柱管が狭くなり、座ったり、腰をかがめると脊柱管が少し広くなります。
それで休むと症状が良くなり、また歩けるようになるというわけです。
腰をかがめる姿勢、例えばスーパーでカートを押しているとき、自転車に乗っているときなどは症状が軽いのが特徴です。

Sさんは漁をしているときは腰をかがめて網を引き上げているので、足が全くしびれなかったんですね。症状が進行すると歩ける距離が徐々に短くなり、ついには立ち上がっただけでしびれてくる、そして座ってもしびれがとれないようになってしまいます。
そしてもっと進行すると、足に力が入らなくなったり(麻痺)、おしっこが出にくくなったり(排尿障害)します。
症状が軽いうちは薬で様子を見ますが、症状が進行してきたら手術が必要になります。
私たちは、手術用顕微鏡下で肥厚した靱帯を切除する拡大開窓術(かいそうじゅつ)という手術を行っています。
そんなに難しい手術ではありませんので、しびれのために日常生活が不自由になったら(歩行距離にして100m程度)、手術を検討された方が良いかもしれませんね。
写真はL4/5の拡大開窓術を行ったところです。
※印のところが除圧されています。

脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫