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腎臓移植

2017/1/13

腎臓の機能と末期腎不全

腎臓は腰のやや上の背中側で左右に1つずつ(通常はひとりに2つ)ある臓器です。腎臓の主なはたらきは、血液をろ過して尿をつくり排泄することでからだの中の老廃物を除去し、体液の量や組成(ナトリウム、カリウムなどの電解質や酸性とアルカリ性のバランス)を一定に調節することです。そのほかにも血圧を維持するためのホルモンや血液をつくる作用のあるホルモンの分泌、骨を維持するためのビタミンDの活性化などの役割もあります。

このように腎臓は生きていくうえで非常に重要な臓器ですが、腎臓の病気によって十分にその機能がはたらかなくなり、元にもどらなくなった状態を『末期腎不全』といいます。末期腎不全ではからだの中の老廃物や体液がうまく排泄、調節できず、この状態が続くと尿毒症となり様々な症状が出現します。末期腎不全に対する適切な治療を行わなければ生命の維持が困難となります。そのため腎臓の代わりとなる治療(腎代替療法)が必要となり、現在その治療法としては『透析』と『腎移植』があります。

透析について

透析には、『血液透析』と『腹膜透析』の2種類があります。透析での治療も近年は進歩しており長期生存も可能とはなっておりますが、正常の腎臓の10分の1程度の機能を肩代わりするだけの対症療法で根本的な治療ではありません。そのため長期的には血管や骨などに様々な合併症が生じてきます。また、血液透析では週3回(毎回4-5時間)の通院、腹膜透析では1日4回の透析液の交換などによって生活に制約を受けます。また、飲水や食事の制限や小児の場合は成長や発育の障害、女性の場合は妊娠困難などの問題もあります。

腎移植について

腎移植は末期腎不全の方(レシピエント)へ提供された腎臓を移植することにより失った腎臓の機能を回復させる治療法で、末期腎不全に対する唯一の根治療法です。透析から解放され、また透析が抱える生活の質(QOL:quality of life)の低下や合併症を緩和することができ、健康な人とほぼ同等の生活を送ることができるようになります。女性の場合は移植を行うことで妊娠および出産、小児の場合は成長や発育が期待できるようになります。近年では透析導入前の腎移植(先行的腎移植)も透析療法を経てからの腎移植に比べ生命予後を改善する可能性が報告されており、行われております。

しかし、この腎移植での治療を受けるためには腎臓の提供者(ドナー)の存在や移植手術が必要となります。また、移植した腎臓が長く生着し機能するためには移植後も免疫抑制剤の内服継続が必要となります。このように腎移植という手段では手術に伴う合併症や免疫抑制剤の副作用、感染症などが問題となる場合もあります。

腎移植には、亡くなった方から提供された腎臓を移植する『献腎移植』と心身共に健康な成人の親族から提供された腎臓を移植する『生体腎移植』があります。献腎移植では日本移植ネットワークへの登録が必要となります。当院では生体腎移植を行います。

生体腎移植の条件

生体腎移植での治療を受けるには、腎臓を提供する側(ドナー)と提供を受ける側(レシピエント)に一定の条件が必要となります。

ドナー(腎臓を提供する側)の条件

  • 親族であること(6親等以内の血族、配偶者と3親等の姻族):日本移植学会倫理指針
  • 心身共に健康な成人であること
  • 腎臓の提供が誰からも強制されていない自発的な意志によるものであり、また見返りのない善意の提供であること
  • 術前検査や麻酔、手術などの負担や安全性の問題を理解した上で同意していること

など

レシピエント(腎臓の提供を受ける側)の条件

  • 末期腎不全であること(すでに透析の治療を受けているか、近いうちに透析が必要となる方)
  • 悪性腫瘍、感染症、胃潰瘍など出血性の病気、重度の血管の病気(動脈硬化や血栓)などがないこと
  • 全身麻酔での手術を受ける体力(心臓の機能、肺の機能)があること
  • 免疫抑制剤を使用できること
  • 自らの意志で移植を希望し、家族の協力が得られること

など

それぞれがこれらの条件を満たしたうえで、関係する家族の総意にもとづいた合意が必要となります。なお、ドナー、レシピエントの血液型は異なっていても、手術前にレシピエントに対して特殊な処置を行うことで移植は可能です(血液型不適合移植)。ドナーの年齢は一般的に20歳以上で70歳以下とされておりますが、80歳までは身体年齢を考慮して適応とする場合があります。

生体腎移植前の検査

生体腎移植を行う前に、まず外来にて採血を行いドナーとレシピエントの組織適合性検査(臓器の相性)と感染症の検査を行います。組織適合性検査の結果、強い拒絶反応が予想されるため移植が困難と判定される場合があります。また、レシピエントは免疫抑制剤の開始後に一部のワクチン接種ができなくなるため、術前に必要なワクチンを接種します。

組織適合性検査の結果、移植が可能と判断された場合はレシピエント、ドナーの順で約1週間の入院にて術前検査を行います。この検査入院にて手術が可能かどうか、悪性腫瘍や活動的な感染症がないかどうかを検索します。具体的には心電図、心エコー、呼吸機能検査、レントゲン、CT、腹部エコー、甲状腺エコー、消化管内視鏡、血液検査、尿検査などを行います。他の診療科への受診も必要に応じて行います(循環器内科、糖尿病内科、消化器内科、心療内科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科、女性の場合は産婦人科や乳腺科など)。

通常は組織適合性検査の結果説明から移植手術まで3ヶ月程度かかります。

生体腎移植術

レシピエントの方は基本的には移植手術の1週間前に入院して、免疫抑制剤の使用を開始します。血液型不適合移植や組織適合性検査で明らかとなるドナーに対する抗体(抗ドナー抗体)が存在する場合は、抗体を除去する血漿交換の治療も行います。ドナーの方は移植手術の前日に入院となります。

まずドナーの腎臓を摘出し(後腹膜鏡下ドナー腎採取術)、レシピエントにその腎臓を移植します(腸骨窩生体腎移植術)。術後、レシピエントの方は手術翌日まで集中治療室(ICU)にて全身管理を行います。その後は一般病棟にて療養し、術後経過が良好で免疫抑制剤の使用が安定すれば退院となります(術後2〜4週程度)。ドナーの方は、術後3日程度で退院が可能となります。

安全に手術を受けられるためには肥満の解消と禁煙が重要です。

移植後の生活

移植後はレシピエントの方だけでなくドナーの方も定期的な通院が必要です。

レシピエントの方は腎移植科外来にて腎臓の機能を含めた検査を行い、免疫抑制剤の副作用や感染症、悪性疾患が発生していないかも確認していきます。通院間隔の目安として、移植手術後は3か月までは週1~2回の受診、手術後3か月以降は2週間に1回、6か月以降は月1回の受診が必要です。

ドナーの方は腎臓高血圧内科外来を受診頂きます。腎臓提供後に腎臓は1つになりますが、日常生活に問題となるような合併症はほとんど起きません。運動も腎臓の提供後に約3か月経てば、提供前と変わらず実施可能です。しかし、腎臓に負担をかけるような生活習慣(生活習慣病として高血圧、糖尿病、脂質異常症や喫煙、肥満など)には注意が必要です。

腎移植の成績(日本移植学会の2016臓器移植ファクトブックより引用)

2015年の1年間に国内で腎移植は1,661例が施行されており、そのうち1,494例が生体腎移植、167例が献腎移植です。移植した腎臓の生着率は免疫抑制剤の進歩と共に向上しており、近年(2010〜2014年)の1年生着率、5年生着率については、生体腎移植で98.7%、94.6%、献腎移植で96.4%、87.5%となっております。