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摂食・嚥下(えんげ)障害

2007/07/01

東京都内では、年末からお正月にかけて毎年30名近くの方がお餅を喉に詰まらせて救急車で病院へ運ばれるそうです。やはり60歳以上のご高齢者の方が多く、中には亡くなられる方もいらっしゃいます。
なぜ餅が喉に詰まってしまうのでしょう?ご高齢になると足腰が弱くなるように飲み込みの力が弱くなることはもちろんですが、問題は人間の喉の構造にあります。動物(ほ乳類)の中で食べ物にムセたり、はたまた喉につまらせて死んでしまうのは人間ぐらいのものです。それは人間の喉の構造が気道(空気の通る道)と食道(食べ物の通る道)が同じ道を使うことに原因があります。道路にたとえて言うと動物は立体交差の交差点、人間は信号機の付いた交差点です。普段は呼吸をしているので空気が通っていますが飲み込むときは呼吸を止めていますね(※猿や馬は呼吸しながら食事がとれます)。信号機は「ゴックン」と音を立てながら動く喉(喉頭)です。信号機がうまく動いていればよいのですが、実はこの信号機ちょっとのことでトラブルを起こします。みなさんも食事中にムセたことがあると思います。

摂食・嚥下障害とは?

まず安全に交差点を通過するには、交差点が通れる大きさに食べ物を刻まないといけません。それには丈夫な歯と顎が必要です。そのあとは舌を使ってよく唾液と混ぜて食物を滑らかにします。唇は口から漏れないようにしっかり閉じています。そして、食物が鼻から出てこないように軟口蓋なんこうがい(喉ちんこの膜)で鼻腔への通り道を塞いで唇や舌を使ってタイミング良く信号機を通過させます。信号機が切り替わっているのは1秒未満なのです。ちょっとでもタイミングがずれると食べ物や飲み物が気管に入ってムセ込んでしまいます。このような一連の流れが何らかの原因で上手くいかない障害を医療の世界では、「摂食・嚥下障害」と呼んでいます。

残念ながら飲み込みに障害を持つ方はたくさんいらっしゃいます。摂食・嚥下障害の原因は様々ですが、一番多いのは脳梗塞や脳出血をはじめとした脳血管障害といわれる脳の病気です。唇や舌や喉は大変複雑な動きをするため、脳からたくさんの神経で制御されていますので、その影響が大きいのです。その他にも舌や喉のがん、虫歯や歯槽膿漏、そして加齢による機能低下があります。この障害の問題は食べることの楽しみが失われるだけでなく、栄養不良や脱水などの二次的障害があります。そしてもっと恐ろしいのは食べ物が気管に入り(誤嚥)、窒息や肺炎(誤嚥性肺炎)を起こすことです。最悪、死に至ることさえあります。高齢者の死亡原因の第一位は肺炎だそうですが、その中には誤嚥性肺炎がかなり含まれているのでないかと言われています。

摂食・嚥下障害に対するリハビリテーション

実際の摂食・嚥下障害に対するリハビリテーションでは、唇や舌をはじめとした嚥下器官の動きや実際に食べているところを観察して評価を行います。その後は 唇や舌、喉の嚥下器官の機能を回復する練習を行います。その他にも適切な食べ方(姿勢や一口量の調整、介助方法)、安全な食事の形態(お粥やミキサー食の 導入)の調整など安全に楽しくお食事が出来るように個人個人にあわせたリハビリを行っていきます。

最後に、先ほどの話の続きで「どうしてムセやすい喉の構造なのか」です。唇、歯、喉、舌などの器官がたくさん出てきました。これらはすべて人間が言葉を話 すときに使う器官です。どうも人間が進化の過程で言葉を獲得するとき(複雑な音をつくるため)喉の構造がムセやすい形に変わってしまったためのようです。 ちなみに摂食・嚥下障害のリハビリテーションでは、"言葉の障害"を専門とする「言語聴覚士(ST)」が多く携わっています。ぜひ安全でおいしい食事を楽 しみましょう。

亀田総合病院リハビリテーション室

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